全国高校生麻雀大会県予選、その団体戦に優勝という結果を残した我が清澄高校。
しかし部員の一人でありながら自分に出来た事といえば優希にタコスを買ってきたくらいだ。強いて言えば合宿でPCを背負って歩いた程度である。
確かに自分は麻雀覚えたてのほぼ素人だ。大会の現場では驚き役を務めるのが精一杯。同じ一年の3人娘が堂々と他校と渡り合う中で、果たして自分はこれから如何にあればいいのだろうか?
「なるほど。それで、せめてサンドバッグくらいにはなろうってわけね」
「ふむ。確かに今のままだと道端の小石くらいでしかないからのぅ」
「小石……っスか」
叩かれ役くらいにはなっていたかと思ったが、どうも部長達から見れば数合わせの一面子でしかなかったらしい。流石に凹む。
「あ、あら? そんなに大マジで落ち込まなくっても。須賀君だって役に立ってるじゃない……ええと」
「PCで牌譜の整理してくれとぅのは有難いでぇ」
「そそ、そう! 皆頼りにしてるわっ」
「……そうなんですか?」
そういう訳で、ある日の放課後。1年の3人娘が帰った後で、俺こと須賀京太郎は竹井部長と染谷先輩に相談を持ちかけたのである。何か自分に出来る事は無いか? 或いは俺に何が出来るのか。今後、どうあれば皆の役に立てるのか。
これからの個人戦を前に、俺は俺で清澄の麻雀部の一員である事を自覚したいのだ。裏方でいい。試合に出れなくてもいい。だが同じ高校生として、そして男として、良いとこ使いパシリという立場はどうなのか? そう考えての相談だったが、一応はこんな自分でもちゃんと役に立っているらしい。少し安心した。
「ま、咲や和は牌譜なんてほとんど見とらんけど。あ、わしと部長もな」
「どちくしょーッ! これだから才能で麻雀打ってる奴はっ」
和はともかく、咲はPCなんて合宿で触ったくらいだしなあ。やっぱ俺、役立たずか。
涙目でへたり込むと、流石に部長が気まずそうにぎこちなく微笑んで俺の肩を叩いた。
「ま、まあまあ。焦る事ないわよ。須賀君だって勉強してるんだから。来年には個人戦にも出られるんじゃない?」
「はぁ……。そうですかねえ」
「うんうん。時間は掛かるかもしれないけど、努力次第で誰もが一目置く選手にもなれるわ」
中学の頃からブイブイ言わせていたらしい部長に慰められても、正直実感が沸かないのだが。まあ、美人に優しく宥められるのは悪い気分ではない。悔しいけど感じちゃう。
「で、須賀は麻雀部でどんなポジションにつきたいんかの? 言うてみぃ」
「どんな……ポジション?」
「そうね。現状でなら、自分に何が出来るかではなく、どうありたいかを先に見定めるのがいいかもしれないわね」
どうありたいか。
ちびっ子ながら場を明るくする優希、意外な程の熱意で部を牽引する和、引っ込み思案だが強力な打ち手として部に光明を灯す咲、そして一歩引いた所から参謀役を務める染谷先輩と、そんな皆を上手く纏める部長。
この面々の中で、自分は一体どんな立場でいたいのか。
「そうじゃのう。この際、多少は現実感が無くてもえぇ」
「須賀君が本当に心から願うのは、どんなポジションかしら?」
現実感が無くても良い。本当に俺が心から願う、そんな在り方。ポッ、ポッ、ポッと普段の部員達の姿が頭の中に浮かび、そこに理想の自分を探す。
時間を掛ける必要は無かった。常日頃から「こうありたい」と思っている自分は、合宿の時以来どんな場面にもいた。
「俺は……エトペンになりたい――」
ひゅうるりと部室に風が吹いた。窓、閉めてあるのに。
ズズイと俺に詰め寄っていた染谷先輩と部長が、柔らかい笑顔のまま急速に後ずさっていく。何でか知らないがその視線が酷く痛い。大真面目に答えたんだがなあ。
「さて。帰りにラーメンでも食べていきましょうか」
「お、ええのう。あの屋台じゃな。いつもの場所に出取ればいいが」
思いっきり俺の事をガン無視し、上級生コンビはそそくさと帰宅の途についた。
如何に麻雀の名手とは言え、やっぱり女子供に男のロマンを理解しろというのは無理があったかだろうか。一人部室に残った俺は腕を組んで頭を捻る。
エトペンになりてぇなあ。そして和に抱きかかえられ、常時おっぱいを支え続けるのである。中核戦力のサポート要員として、これ以上重要な存在は無いだろう。あのおっぱいでなら世界とも戦える筈だし。
それは俺が急に桜井章一クラスの達人になる以上に現実感のない妄想ではあった。
人がヌイグルミになるなど。
が、神様はちゃんといるらしい。
部室を閉めて帰り道をトボトボ歩いていた筈の俺は、いつの間にかエトペンになっていた。
「ふぅ。宿題も終わったし、お風呂入ってこよう」
気がつけば暖色系で纏まった部屋にいて、視線の先には全自動雀卓を挟んで変に高価そうな椅子に座った和がクールな顔で机に向かっていた。彼女なりの部屋着なのだろうか、制服でも寝巻きでもない異様にフリフリの白っぽい服である。
状況を察するのに時間が掛かったが、和が俺の事を一切気にしていないのと、自分の体が全く動かない事でおおよその見当はついた。どうやらここは和の家で、俺は彼女の所有するぬいぐるみになってしまったのだと。しかも和が毎日抱いて眠っているエトペンであったのだ。
素晴らしい。神様グッジョブ。正に俺が望んだポジションだ。
無邪気に喜ぶ俺に気付く事無く、和がスタスタと部屋を出る。
うはー、早く麻雀始めないかな。彼女は家でネット麻雀を打つ時、いつだって俺ことエトペンを抱える筈だ。楽しみでならん。
「はあ……良いお湯でした。宮永さんも、今頃はお風呂かしら……」
ウキウキしつつ待っていれば、やがて風呂上りの和が帰って来た。下ろした髪がまだ湿っており、おっとりした目付きが色っぽい、しかも淡いピンクのネグリジェという格好だ。生地が薄いのか、蛍光灯の下で微妙に透けており良く見れば下着の柄が薄っすらと浮いている。
どうしよう。エロいよ。そんなんで抱きかかえられたら、俺はどうすれば良いのか。
「さ。おいでエトペン。今日も、しよ?」
何をっ!? そんなポヤーッとした顔で「しよ?」とか言われた俺は何すればいいのっ? え、エエ……エロい事?
思わず興奮の余り架空の鼻血が脳内で噴水状態だが、まあ冷静になれば何をするかは明白だった。俺を小脇に抱えた彼女はPCの電源を入れ、そして何故か部屋の灯りを消す。
目が悪くなるぞー、と思ったが。それを伝える術はなく、またそんな些細な事を気にする余裕も無くなった。
ふにゅっとしてプヨンだったからだ。そしてプニプニでぽよんでもあった。
「……んしょ。んっ」
ほおおおおッ!
細いのに柔らかいお腹がっ! 華奢なのにムッチリ感のある太ももがっ! 何より圧倒的重量感がありながらフワフワで弾力があってふんわりしたおっぱいがっ!
椅子に座ってマウスをカチカチ鳴らす和が、キュッと俺を抱き締めたのだ。太もも、お腹、おっぱいで包み込むように。
温かくて柔らかく、しかも風呂上りで良い香りが漂いまくる。その組み合わせによる感触は、例えれば男の魂を溶かしてダメにする女性の胎内そのものであった。
「ん、ふぅ……はぁ。んっ」
しかもネットでの対局が始まると彼女は例によって妙なトランス状態に入り、熱の篭った吐息がダダ漏れだ。そしてピッタリと抱きかかえられて分かったのだが、和は僅かに体を揺すりながら下腹をエトペン、即ち俺に擦り付けていた。
「んんっ、はぁ……ふぅ。ハァ――」
傍目に分かる身動きではないが、体の中がウズウズしているらしい。
そうかー。これが和の本気モードなのかー。体温と息が上がるだけじゃなかったんだー。
「んふ……んふふ。ぁ、はぁ……良い感じ」
俺を撫でる腕に力が込められ、ムギュとおっぱいが押し当てられる。こんな気持ち良さがこの世にあっていいのだろうか。ああ、もう一生このままでいたい。ほぼ全身で彼女の柔肉を受け止めた俺は、元の人間に戻れる保証が無い事をむしろ喜んでいた。
「んっ、ハァ。ロン……4000オール。ふふ……んっ」
自宅で端っから人目が無いのを良い事に、和はトランス全開だ。上気して熱くなった肌を俺に擦りつけ、鼻に掛かるくらいの甘い吐息を引っ切り無しに漏らしている。
画面を見れば東3局で早くも起家が飛ばされていた。チャットのメッセージボックスに何やら文字が浮かんでいたが、全く意に介する事無く対局を終了し、次の対戦者を求める。
「ふぅ……ふぅ。んっ、ハァ……今日は、これくらいに」
ボヤーっとしたまま恐ろしいほどの勝率で数回の半荘を終えた和は、ブラウザを閉じて前傾した。フルフルと震えながら俺をギュッと抱き締め、闘牌訓練後の余韻に浸っているらしい。
「はぁ、ふぅ。エト――ペン、ん、んっ。私……また」
だが、どうにもそれだけではなさそうだ。何やら熱に浮かされたような顔で俺を撫で回し、頬擦りまでして来る始末。物言わぬぬいぐるみの身が恨めしいやらホッとするやらだ。ちょっと俺の方もおっぱいに喜んでばかりはいられない。唯一自由に出来る頭の中は大暴走だ。
「ふふ……んふふ。ねえ、エトペン。宮永さん、今頃何してるかな?」
俺に聞かれても。フラリと椅子から立ち上がった彼女が、俺に正面を向かせて問いかけてくる。そして危なっかしい足取りでヨロヨロとベッドに向かい、そのまま崩れるように倒れて横になった。当然ながら俺はおっぱいに埋もれたままだ。
一晩中この姿勢でいられるのかと思うと、嬉しさの余り脳ミソが溶けそうだ。が、事態はそれだけに留まらなかった。
「んっ、エト……ペン。はぁ、んッ! ふぅ、はぁ……あ、あぁ」
あろう事か。和は思いっきり俺をかき抱いて悶え始めたのだ。
ちょ、何やってんだ!? そう驚く暇も無く、エトペンの羽、即ち俺の手を乳房に押し当てる。ぽよんと柔らかい肉の中に、一部違う感触があった。むしろそこをこそ重点的に擦りつけられる。
ちち、乳首やーっ! のどパイの先っちょやーっ!
「んっ。ダメぇ……エト、ペン。そんなに擦っちゃダメぇ……ん、んぁ」
擦り付けとぅのはアンタや! 思わず突っ込んだが彼女の耳に届く筈もなし。徐々にヒートアップしてきた和は、俺の手をグリグリと乳首に擦り付け、ベッドの上で身悶えしている。
「んっ、やぁ……そっちは。んっ、ダメ……エトペンっ」
ダメダメと言いつつ、俺を動かしているのは彼女本人である。おっぱいからお腹に、そして身を起して今度は足でギュッと挟んで来る。口ばしが、つまりは俺の口が、和の秘密の花園を突付いているのだ。困った事に。
お……おおおおっ! エトペンと和はそんな関係だったのか! 何となく想像することはあったが、まさか自分自身が体験するとは思わなかった。
「あっ、あ。ん……やんっ! そんな、ダメなのに……んっ」
ネグリジェである。しかも生地薄々の。当然ながら裾は緩く、足を広げたり物を挟んだりすると容易に捲れ上がってしまう。というか彼女は、むしろ自分からネグリジェの裾を捲って俺を股間に押し当て始めた。
ギュム、ぎゅむと大事な場所を俺の口で刺激する。パンツ一枚隔てて生割れ目だ。俺が元の体であればツバを飲む所の騒ぎではないだろう。
「んぁ……あ。や、エトペン、そんな……そんな事されたら、んっ。私……」
和の声のトーンが一段高くなった途端、乾いていた下着にジワリと別の感触が加わった。それを俺が口の先で突付いた瞬間、だがパッと持ち上げられてしまう。
「んやあ、やっ。はぁ……ハァ。んっ、エトペン、焦っちゃダメ……んしょ」
ここまで来てそんな殺生な、と思ったが、彼女は単に下着が濡れるのを嫌がっただけだったようだ。俺が真正面から見つめる前で、もどかしそうに体をくねらせながら、スッと下着を脱いだ。
脱いだ。脱いだっ!?
部屋の灯りは消えているが、まだPCの電源は落ちていない。そのモニタの薄明かりの中、和の綺麗な女性器が目の前に現れる。
肉付きの割りに陰唇が薄く、割れ目はピタッと閉じられ、外見以上に子供っぽい。が、タラリと蜜を一筋垂らしていて、それがまた目の離せないエロさである。
「はぁっ……ハァっ! え、エト、ペン。私……私……」
パンツを脱いで膝立ちになった彼女は、そのまま息を荒げて大胆にもネグリジェを脱ぎ捨てた。残るのはブラジャーだけだが、それにも手を掛けている。
うはああっ! の、のどっ、和さんっ。ご自宅ではそんなんなんスかっ! 対局中のトランス状態以上に目をトロンと垂れ下げ、熱湯で茹でられたかと思うほどのぼせ上がった顔で、ついに和はブラジャーをも脱ぎ捨てた。
身に一糸も纏わない。全裸。すっぽんぽんだ。
プラスチックの瞳をひん剥いた俺は、食い入るように彼女の全身を見つめる。頭の中の懸命な一部器官が必死に映像記録に励むが、それ以外はあらゆる感覚を使って凝視に努めた。
無い筈の脳みそにドーパミンが溢れ、見るという行為だけで快感が沸いて来る。こんな状態で和の体に押し付けられでもしたら、俺は大変な事になってしまうだろう。
「ん……んむ。エトペぇン、んっ……はぁ。んッ!」
だが待ってくれるような彼女ではない。和は最早我慢ならんという表情で俺を抱き上げ、夢中で頬擦りし、こちらの体中にキスをする。挙句、さっきまで股間に押し当てていた黄色い口ばしを自分の唇で挟み、その先端をチロチロと舌で舐め挙げた。
お、俺……今、和とディープキスしてるのかッ!
向こうにその気は無くとも、こちらはまんま大人のキスである。どういう仕組みなのかはともかく、彼女の少しだけザラリとした舌の感触が細かい部分までダイレクトに伝わってきた。こうなると舐め返せないのはちょっと残念だ。
「んはぁ……あ、あっ。お願い、エトペン。こっちも……んっ、はぁ」
口先に唾液を含まされた俺が、再び胸に当てられる。今度は生おっぱいだ。肌触りが、その滑らかさが明らかにグレードアップ。官能的とはこの事か。
「んああッ! あ、あッ。や、やぁ……だめェ。んっ、んあぁ」
充血して膨らんだ乳首を擦りつける俺の口ばし。合宿では優希に「自分のパイの使い方を覚えるべき」などと言われていたが、中々どうして十分に使いこなしているではないですか。エトペン相手限定だとしても。
ブラジャーから解放されて、揺れ動き、跳ね回る豊かな乳房に俺を押し当て、擦り付ける。固くなった乳首は特に重点的に口ばしで。そこにツバを垂らしたのは、エトペンに舐め回されている感覚が欲しかったからだろう。うーむ、可能なら自分の意思で舐め挙げたいものだ。
「ふうっ、ふぁ……。やあぁ、私、おかしくなって来た」
どんどん行為にのめり込んで来た和が、ついに俺で股間を擦り始めた。壁に寄りかかってベッドに座り、両足は膝を曲げて開く。俗に言うM字の格好だ。あわあわと言葉にならない喘ぎ声を盛んに上げ、両手で俺を押さえて腰を揺する。
「はぁッ! あ、エ……エト、エトペンっ! んあぁッ、あっ」
そして擦り付けられるほどにジワリジワリと粘性の液体が俺の体に染み込んでくる。
いつからエトペンオナニーをやっているかは知らないが、さて、このぬいぐるみは過去にどれだけ和の愛液を吸ってきたのか。これを人前で持って歩ける彼女は流石に大物の貫禄である。
いや、それはともかく。
和がヒートアップしているなら、それは俺にも言える事だ。彼女にこれだけの痴態を見せ付けられ、ジュプジュプと音が立つほど割れ目を擦らされているのに、自分からは何一つアクションを起せないのである。嬉しさは臨界点をとっくに突破しているが、もどかしさもまた大きく膨れ上がっていた。
触りたい。撫でたい。擦りたい。何より挿れたい。
畜生! せめてエトペンに秘密のアタッチメント装着機能があればっ! そういうテディベアが確か存在した筈。だが彼女には、まだ膣に何かを挿入するという概念は生まれていないらしい。知識として知っていても、自分には早いと思っているのだろうこの淫乱ピンクめ。
ふつふつと俺の意識の中に暴力的な衝動が沸き起こってきた。身動き取れない状態で延々と嬲られているようなもので、正直辛い。これじゃ生殺しだ。
くそう! 動け、動け、動けっ! 今動かなきゃ何にもならないんだよッ! と、近年リメイクされて劇場版になった某アニメの主人公とシンクロしつつ、必死にエトペンボディに力を込める。
「んああッ! エトペンっ、ん……い、良いのっ。んっ、私……あンっ」
完全に欲情しきった和が派手に俺で股間を擦り、或いは前傾して乳房を押し当てる。
うっ、がああああ! もう辛抱堪らんっ。こ、こ、こうしてくれるわッ!
「え……あ? ああンっ。え、エトペン? んん――ッ。あ、あぁ」
乱れまくっている彼女に包まれて、ついに俺の中で何かが覚醒したらしい。自分でも気付かない内に、俺は羽根を広げて和の腰をキュッと掴んでいた。そして涎を零す陰唇に口ばしを差し込む。
動いていた。動けていた。ホンの僅かではあるが、自分の意思でエトペンボディを動かせていた。神様ありがとう。
それだけではない。見える人には見えていただろう。俺の丸々とした体から立ち昇る青いオーラが。今の俺なら分かる。県大会で風越のキャプテンとかウチの部長なんかが似たようなオーラを纏っていた事を。
物凄い勢いで「お前のとは違う」と叱られそうだが、風越のキャプテンさんに叱られるならむしろ本望かもしれない。
「え、あ、あああッ! え、エトペンっ? あ、嘘……ンっ、何かが、私の中に……」
最高にテンションの高まった俺は凄かった。自らが発したオーラを思い通りの形に束ねる事すら出来たのだ。恐らくはそうやって内部に発したオーラで羽を動かしていると思われる。意思の力って凄い。
念願の、触り、擦り、撫でる事が出来たのなら、後は挿れるだけだ。和には見えていないらしい青いオーラをエトペンボディの下腹部に集結させ、棒状に束ねて男性器を形作る。そして狙いを定め、おもむろに挿入した。実体がある訳ではないから彼女に傷を付ける事は無い。だが膣口を割って入ったオーラチンコは確かに和の胎内を感じていた。
ヌヌヌと侵入した彼女の膣内。未開通ながらも愛液でトロトロになり、無数の襞が俺の物を淫らに舐め上げる。
「はァんっ! んっ、んんッ。あ、あぁ……い、いつもより、凄……い。んんッ」
表面をぬいぐるみで擦るだけのオナニーとはまるで違う感覚に、彼女はブルブルと下腹を震わせた。鼻に掛かる嬌声は更にトーンを上げ、未知の快感を、だが貪欲に味わっているようだ。
喜んで貰えて何よりである。それじゃあ、俺も楽しませて貰おうかなっ!
下腹部にしっかりと抱えられた俺は、羽根を広げて和の両足の付け根を押さえ、膣内に挿入したオーラチンコを出し入れした。エトペンの体をパンパン打ち付けるほどには動かせないので、むしろチンコの方を伸ばしたり縮めたりする感じだ。
「あ……あッ! 嘘、こんなの、んぁっ! は、初めて……ん、んんッ」
根性で亀頭までちゃんと形作ったオーラのペニスで、狭い膣内を擦り上げる。蠕動する襞にヌルヌルと絡みつかれ、それを引き剥がしながら奥へ。そして子宮の入り口を先端で撫でてから再び膣口付近まで。時に大きくゆっくりスライドし、或いは短い範囲で速度を上げて、彼女の無垢な膣を隅々までたっぷりと貪る。
「んああぁぁっ。あ、あッ! 気持ち、良すぎて……あ、あっ! 私、んああっ」
本物の固い肉棒ではないから一切の痛みは無く、和が受け取るのは快楽だけだ。俺を抱えてひたすら甘く悶え、上の口からも涎を垂らしている。瞳は焦点を失い、ドロリと濁って普段の凛とした印象が完全に消えていた。
ああ――和。俺の和。可愛いったらないぞ。
擬似セックスに浸りきっているのは俺も同じで、女の子を、しかも原村和を悦ばせるという感動はオナニーの比ではなかった。
「んっ、んふ……あ、ああ。え、エトペン。私、わたし……もう。んああっ」
しかしながら、お互いにそろそろ限界だ。半荘にもエッチにも終わりはある。
大きく足を開いて俺をギュウと股間に押し込んだ彼女は、虚ろな目に涙を溜めて顎を上げたり引いたりしていた。こちらもオーラの強さこそ加速度的に高まっているが、渦巻く欲望を解放したいという衝動が抑えきれなくなっている。
よし、ラストスパートだ。そう決心し、俺はついに固形化しそうなほど存在感を増したオーラチンコを和の膣内深くに挿入。ヌプヌプと音が立つほど掻き回した。
「ん、くぅ……。ひっ、あ、あンっ。や、や、やあああぁぁッ!」
10秒か20秒か。もっと長い時間かもしれないし、実は数秒だったかもしれない。そんな時間を経て、彼女は一度思いっきり身を縮め、そして跳ねるように大きく背中を反らせた。
膣内の壁がキューっと締まり、中に入った俺の意思そのものを搾り上げる。
そこにこちらも欲望を吐き出した。エトペンボディの体内からオーラチンコを通り、先端から正体不明のオーラ精液が溢れ出す。一体それが何なのかは自分でも不明だが、射精感はあったし、魂が震えるほど気持ち良かったのでよしとしよう。
「ふぅ、はあ……ふぅ。んっ! エ、ト……ペン。んっ、ふぁっ。はぁ……」
絶頂に達した和がグッタリとベッドに横たわり、うわ言のように俺の名を呼ぶ。いや、俺というかエトペンの名前をだが。まだ快感の波が引いたり寄せたりしているようで、落ち着いたかと思ったら急に股を閉じて細かく痙攣したりしていた。
俺はというと纏っていたオーラがすっかり消え失せてただのぬいぐるみに逆戻りだ。まあ良い。望みは果たせたのだから。
「んっ、ふぅ……はぁ。何だか……凄かった。エトペン?」
暫くして己を取り戻した彼女が、ベッドに転がった俺を拾い上げ、可愛らしく首を捻る。何となく不思議に思っているようだが、それより早く服を着るべきだと愚考する次第。個人的には嬉しいけど、風邪でも引いたら俺の所為だ。
「んー? うふっ。ねえエトペン、今日の事、宮永さんには秘密よ?」
顔を赤くして照れ臭そうに笑い、ぬいぐるみに語りかける和。そんな子供っぽい所も可愛いよなぁと内心でニヤける。ああ、本当にエトペンになって良かった。
柔らかそうなタオルで体を拭き、身繕いを済ませた彼女が一度ベッドを離れてPCの電源を落しにいく。そして暗くなった部屋の中をフワフワと歩いて戻り、改めて布団を捲った。
当然のように俺は和の胸元に収まり、そのおっぱいのたっぷりとした柔肉の感触に包まれる。もう元の体になんか戻れないよ。ゴメン、父ちゃん母ちゃん。俺、今から須賀京太郎の名前を捨てて、エトペンとして生きるから。残った遺体は灰にして諏訪湖に流して下さい。
「おやすみ、エトペン……」
おやすみ、和。
で、翌朝。
俺は当たり前のように須賀京太郎として目を覚ました。場所も自宅の自分の部屋だ。
いつも通りに寝巻きに着替え、極々普通に自分のベッドの中にいた。強いて言うならトランクスの中がベトベトだったくらいだ。
「こんな事だろうと思ったよ畜生っ!」
在り来たりな青春の暴発だ。まあいいや。良い夢見させて貰ったのは感謝しよう。
着替えを済ませて学校に向かい、道すがら咲と合流して一緒に道を歩く。良い天気だなと空を見上げた所で、傍らの咲が嬉しそうに手を上げて走り出した。
「お早う。原村さんっ」
「あ。み、み……宮永さん。お早う御座います」
「あれ? 顔、赤いけど風邪?」
「え、いえ。昨日、ちょっと……その」
「ちょっと?」
「エトペンが……い、いえッ。何でもありません。さ、学校行きましょう」
何かを思い出したように顔を赤らめる和。思わずボウッとした表情で何事かを口走りかけ、慌てて手を振って歩き出す。その、やけに充実したようなスッキリしたような腰周りを眺め、俺は内心で呆然とした。
いや何と言うべきか、どうにもこうにもハッキリはしないが。
神様は実在するのかもしれないな。
――了。