夏影連歌

 うるさい程のセミの大合唱で目を覚ます。
 じっとりと絡みつく暑い風。視線の先には年季の入った木目と、釣り下がった電灯。
 額を汗が流れる。それを拭って一言。

「知らない天井だ――」


 後/ 渓流。


 時間は既に11時を回っていた。布団には俺だけ。蚊帳は外されていた。
 身を起こして伸びをする。少しだるいが、これは寝ている間に汗をかいた所為だろう。
 頭はそこそこにはっきりしている。起き抜けに90年代のアニメネタを振れる程度には。だが悲しいかな、突っ込んでくれる人が居ない。

 着替えて顔を洗い、居間に顔を出す。
「おはよう。叔母さん」
「あら、おはよう。良く眠れた? ごめんね、羽弥と一緒で狭かったでしょ」
「いや、ははは。気になりませんでしたよ」
 まさか、夜中にちょっと悪さしましたとは言えない。顔が微妙に引きつってしまったが向こうは気付かなかったようだ。叔母さんは台所で鼻歌混じりに包丁を 振っている。
「お昼までもうちょっと掛かるけど、朝食べてないからお腹すいてるでしょ? 何か食べる?」
「いや、大丈夫。昨日の夜が多かったからね。所で、ばあちゃんと羽弥は?」
「2人とも畑に行ってるわー」
 暢気な声で答え、ダンダンと豪快に包丁を振り下ろす。羽弥が能天気なのは絶対にこの人の血だ。
「じゃあ、俺手伝ってくるよ」
 そう言って居間を出た。
「ありがとー。帽子被ってってねー。電話の所にあるからー」
「はーい」
 玄関の近く。昔から変わらぬ黒電話に感慨を覚えながら、電話台の横に掛かっていた麦藁帽子を手に取って外に出る。
 日差しが強い。じっとしているだけで汗が出てくるほどだ。セミの鳴き声も凄まじい。うだるような暑さの中、俺は帽子を頭に乗せて歩き出した。


「おーい」
 家の裏手に回ると、結構広い畑で草取りをしている2人の姿があった。片手を上げて呼びかけると、2人とも顔を上げる。
「聡史ちゃーん……」
「ああ、聡史か。目が覚めたかね」
 汗だくでグロッキーの羽弥と、同じく汗だくながら全く疲れてなさそうな祖母。対照的で面白い。
 祖母は還暦を越えてもう幾年か過ぎた筈だが、相変わらず矍鑠としている。昔は薙刀の名手だったそうで、色んな大会の賞状が部屋に幾つもある。今でも時 々、庭で練習用の木製薙刀をブンブンと振り回している。体力ははっきり言って俺よりもありそうだ。正直、喧嘩したら勝てそうに無い。孫の2人には甘いので 安心だが。
「手伝いに来たよ」
「ほうか。じゃ、草抜いてこの袋に入れてくれな」
 麻のズタ袋を渡される。と、ふらふらと羽弥が寄ってきて、腰に抱きついてきた。
「聡史ちゃん、暑いー」
「俺に言うなよ。夏なんだから暑いものはしょうがないだろ」
 ピタッとくっ付かれると、やはり昨日の晩の事を思い出してしまう。思わず唾を飲んだ。
 そうなると、思った以上に意識してしまう。
 俺は悟られぬよう、帽子を被った羽弥の頭を片手で掴んで引き離した。
「ほうら、草取りするぞう」
「もう。沢山取ったよー」
「まだあるっての」
「それは聡史ちゃんの分ー」
「ぬあっ! そうかよ……」

 その後1時間ほど、3人で農作業に勤しんだ。はしゃぐ羽弥とその相手をする俺。それを見て笑っている祖母。昼御飯が出来たと叔母さんが呼びに来た頃に は、俺はへとへとになっていた。

   /

 4人で昼を食べた後、叔母さんに一声掛け、釣り道具を持って家を出た。
 ここでの楽しみと言えばやはり釣りである。村の外れから山道を歩いて20分の場所に綺麗な渓流があるのだ。昔、親父と叔父さんが祖父に教えてもらった場 所だそうで、深澤の男衆以外には内緒になっている。今ここを知っているのは、親父と叔父さんと俺。それに女ではあるが羽弥。コイツがここを知っているの は、以前叔父さんが後を付けられたからだ。
 川幅は広い所で7メートルくらい。小さな滝があるが、落差は大したことは無く滝壷も決して深くないので怖くは無い。羽弥などは平気で潜ってたりする。夏 の水浴びに最適の場所だと彼女は言うが、俺には少し水が冷たすぎる。
 主な獲物はニジマス。生餌は面倒なので使わない。むしろ気持ち悪くて使えない。専らルアーフィッシングだ。
 上手く釣れれば晩の食卓に並ぶ事になるが、さて。

 リュックを背負い、魚篭をぶら下げて歩いていると、後ろから羽弥が追ってきた。
「聡史ちゃん! 何で私をおいてっちゃうのさー!」
「いや何でと言われても」
 特に理由は無い。と言いたかったが、実はある。少し頭を冷やしたかったのだ。そうしないと、なんだ。大変な事になっちゃうぞ? とか何とか。
 だがまぁ、追って来てしまった物はしょうがない。少しにやける自分が正直だ。よこしまな気持ちからではなく。単純に、自分を慕ってくれる年下の従妹が側 に居てくれる事に対して。
 だから笑って誤魔化して、並んで歩く事にした。


 深澤家の秘密釣り場は山の中。林を抜け、崖を迂回し、狭い洞穴を抜けた先にある。
 今日のような良く晴れた夏の日には、とても綺麗な場所だ。それは今年も変わらない。
 俺は川原に着くと、早速荷物を下ろして準備を始めた。釣竿を取り出し、リールをセットする。ルアーは多少悩んだ末、基本とも言える金色のスプーンを使う 事にした。カップのアイスを食べるときに使うへらのような形をした金属片だ。今年は、ミノーと呼ばれる小魚を模したルアーも新しく購入していたのだが、今 になってなくすのが怖くなったので止めた。コイツは2,500円も出して買ったのだ。
「どう? 今日は釣れそう?」
「釣れればいいなぁ」
「あっ、それ格好良いね!」
「おう。格好良いだろ」
「うん! 似合ってないけど。あははっ」
「……ほっとけ」
 太陽光を反射する水面がまぶしいので偏光サングラスを掛ける。どちらかと言うと童顔なので似合わない事はなはだしい。買った時、友人に笑われてそれを痛 感したが、まぁいい。普段掛けるわけじゃないのだから。
 魚は、いる。確かに数匹のニジマスが確認できる。少し遠めに、そっとルアーを投げて引き寄せる。
 さあ、掛かれ! フライにしてタルタルソース付けて食ってやる。

 結果から言うと、釣れるには釣れた。その数3匹。出来れば人数分の5匹を釣り上げたかったのだが、始めて40分程経ったあたりで羽弥が飽きて川の中に 入ってしまったのだ。「暑いー!」と叫びながら。まぁいい。40分で3匹釣れただけでも大したものだ。
 それでも雰囲気だけ味わおうと、ルアーを外して重りだけつけて川に放る。こうしないと魚ではなく羽弥を釣り上げてしまうからだ。以前、何度かやった。

 真夏の太陽に照らされて、釣り糸を垂れ、ひたすらぼうっとする。木々に囲まれた川辺は、風も幾らか涼しい。じっと目をつぶれば、渓流の穏やかなせせらぎ が――。
「えいっ!」
「わぷ!」
 自然と一体になって瞑想を始めようとした所で、文字通り水を差された。パシャッと。
「って羽弥! コノヤロ……う」
「あはははっ! そーれ!」
 ぎょっ、とした。魚釣りだけに。いやそうじゃない。羽弥がさっきから川でバシャバシャやってたのは気付いていたが、いつの間にやら服を脱いでいたよう で。
 簡潔に言うと、全裸――だった。
 一糸纏わぬ姿で楽しそうに水を掛けてくる。
 俺は驚いて、ポカンと口をあけた。そこに水の塊が直撃する。
「あぶっ! けふっけふっ……。こ、こうら、何しやがる!」
「きゃーっ」
 俺が立ち上がると、羽弥は後ろを向いて逃げ出した。日に焼けていない白い小さな尻が揺れる。直ぐに立ち止まって振り返り、また水を掬ってこちら目掛けて 放ってくる。
「あははははっ!」
「あー、もう。こんちくしょう」
 俺のセリフは、多分棒読みになっているだろう。目の前で、無邪気にはしゃぐ従妹の姿にあてられて。
 トスンと腰を下ろして再び座り込み、そのまま背中を倒して寝転がった。不自然でなく目を逸らす一番良い方法だと思ったからだ。向こうで残念そうな羽弥の 声が聞こえる。
「あれ? もう終わりなのー?」
「水かけっこなんてやだよ。冷たいし」
「なんでさー? 気持ち良いのに」
 川から上がった羽弥は、例によってそのまま近づいてきて、――俺の腹の上に乗っかった。
「ぐふっ!」
「あはは、聡史ちゃーん」 
 全裸で俺に馬乗りになる羽弥。うううううん。正直困った。
「あのな羽弥さんや。川に入るんなら水着くらい着た方がいいんじゃないのか?」
「えー。わたしあれ嫌い。苦しいもん」
「苦しいって、なぁ……」
「ここなら聡史ちゃんしか居ないから」
 Tシャツ越しに水で冷やされた尻の感触が伝わる。のっぴきならない事態に、ジーンズの中の物が硬直する。いや、するなよ! まずいだろが。
 どう対応していいか分からず、俺はそのまま目をつぶっていた。羽弥も何を思ったのか、俺の上に乗ったまま、動かずにじっとしていた。
 自分しか居ないから水着を着なくてもいい、というのはどうなんだろう? 極普通に、家族として見ているから、なのか? 或いは、俺になら裸を見られても 良い、というのは自意識過剰か? まさか性に関する知識が全く無いと言うわけでもあるまいが。
 こいつは俺の事をどう見ているのだろうか? 従兄妹という、近すぎもせず、決して遠くも無い血縁。そして血縁でありながら法的には結婚も出来る間柄。
 8つ年下。12歳。小学生。まだまだ子供。でも来年は中学生。少しだけ大人。
 セミが鳴き、煌々と太陽が輝く真夏の空の下、何ともいえない沈黙が続く。
「ねえ、聡史ちゃん」
「うん?」
 やがてポツリと羽弥はつぶやいた。
「東京って、楽しい?」
「そうだなぁ。楽しい事もあるし、そうでない事もあるかな」
「じゃあ、ここは?」
「ここは楽しいよ。お前も居るしな」
 目を開けると、羽弥はじっと俺を見つめていた。
「聡史ちゃん。ずっとここにいればいいのにね」
「う……ん。でも大学もあるしな」
「そっか」
 やはりコイツは、寂しいんだろう。一人っ子だし。
 俺はホッとした反面、少し残念でもあった。
「羽弥」
 手を伸ばして水に濡れた頭を撫でる。んー、と目を細めてしばらくは大人しくしていた羽弥は、そのままポフッと俺の胸へと倒れこんだ。
 そのまま首筋に顔をうずめると、――コイツなりの親愛の表現なのか――鎖骨の辺りをぺロリと舐め上げた。
 思わず背筋が震える。裸で抱き付かれ、まして舌で舐められるなどという行為を俺は受けた事が無い。落ち着こうとすればするほど、神経は敏感になり、羽弥 の舌が這う鎖骨に集中する。
「んっ、んっ――」
 徐々に鎖骨から首筋、そして顎へと、羽弥の唇が移動する。
 俺は動けずにいた。背中を汗が流れる。真夏なのでおかしくはないが、正直それは冷や汗ではないかとも思う。
「聡史ちゃんは、こういうの嫌い? 私が裸でも嬉しくない?」
「……羽弥。お前自分が何を言ってるか」
「分かってるよ。習ったもん、学校で」
 学校でか。どんな教育をしてるんだ一体。いや、性教育くらいは小学校でもやるのか。
「生理だってあるんだよ。おっぱいは……まだ小さいけど」
「そ、そうか。めでたいな」
 乾いた笑顔を貼り付け、俺は申し訳程度に「あはは」と声に出したが、羽弥は意に介さずに再び薄い胸板を押し付けてきた。
 俺はまだ動けない。迷っていたのだ。このままコイツを抱きしめていい物かどうか。衝動と倫理観、理性と欲望。よくある天使と悪魔が、頭の中で争う。
 ここは大人の対応をしておきなさい。いや、やっちまえよガバッと。ダメです。羽弥ちゃんは小学生なんですよ。そのガキのケツ触って喜んでたのはどいつだ よ。あれは気の迷いです。ちょっとハイになってただけです。でも今は向こうから誘ってるんだぜ。そこを堪えて嗜めるのが大人です。大事なトコ固くして、そ れはねぇだろ。いいからホラ、やっちまえ! ダーメーでーすー!

「ねえ聡史ちゃん」
「お、おうっ。なんだ?」
 俺の脳内千日戦争を見透かしたように、羽弥は顔を近づけて耳元で囁いた。
「昨日の夜、私のお尻触ってたよね」
「――ッ!! お前、気付いてたのか」
「あははははっ、聡史ちゃんエッチだー!」
 屈託無く笑われると、どうにもこうにも返答の仕様が無い。彼女は笑いながら、だが俺の手をとってそのまま自分の胸に当てた。俺は力なく、なすがままに なっている。
「でも良かったよ。聡史ちゃん、興味あるんだよね? こういう事」
「あー、そりゃまぁ。俺も男だし、な。けど羽弥、お前はいいのか?」
「いいの。私は聡史ちゃん好きだから。……ずっと居てくれなくてもいい。お嫁さんにしてくれなくてもいい。でも、偶には帰ってきて」
「――……羽弥」
 コイツにここまで言わせたのだ。答えないわけにはいかない。脳内悪魔も天使の胸を揉みしだきながらピースサインを送っていた。俺はサムズアップを返し、 そして小さな胸の上で指を動かす。
「んっ。聡史ちゃ……ん」
 切なげに眉をひそめる羽弥。今まで見たこともない顔だ。
 その眉の上、額に軽く唇を付けた。そのまま下がって鼻に、そして頬に、最後に唇に。
「んむ。……ん、んむ」
 触れるだけではあるが、しっかりと唇同士を重ね合わせた。口を割って舌を入れるのは、まだ少し怖かった。その途端に拒絶されそうだったから。いや、コイ ツはきっと受け入れるだろう。でもこの小さな体の中に入るという印象が俺を躊躇わせた。
 今は、それで良かった。

 口を離すと、羽弥の目が垂れ下がっていた。とろん、という音が聞こえそうなくらい。俺は彼女の体を引き寄せると、頬や額に細かいキスを降らせながら、 そっと手を下ろす。
 陰毛、と言うより産毛の延長のような柔らかく薄い恥毛をさわさわと指で掻き分ける。それがくすぐったいのか、羽弥はふるふると体を震わせた。
 指がその直ぐ下にある秘唇に到達する。ピタリと閉じあわされたそこは、水とは違うサラサラとした蜜で、ちゃんと湿っていた。爪を立てないように、指の腹 でゆっくりと割れ目をなぞる。
「はっ、ああっ。そこは、んんーっ」
 声に嫌悪感はない。鼻を鳴らして身をよじる。
 一度手を離し、すばやくTシャツを脱ぎ捨てた。冷たい羽弥を温めるように横抱きする。
 幼児体型をようやく脱したばかりの肢体。これから時間をかけて女になってゆく、だが今は幼いその体。滑らかでしっとりとした肌触りは、焼け付くような日 差しの中でも決して損なわれていない。
「はああぁぁぁ――」
 直接素肌を合わせる事の陶酔感に、羽弥も甘い溜息を大きく吐いた。
 無理は禁物だと自制しつつ、指は彼女の下半身に伸びる。一度そこまで行けば、もう離せなかった。一定のペースで秘唇の始まりから終わりまでを擦り、時折 内股に手を伸ばして細い足を撫でまわした。決して力を入れず、ゆっくりと。
「はふ、あふっ。んっ、んっ! はぁっ、何か、何か変だよっ。んんっ――こんなの……」
 女性として上り詰めるのは初めてなのだろうか? 体をくねらせ、戸惑いと恐怖の入り混じった顔を浮かべて、羽弥が腕にしがみつく。
「んっ、ひゃあぁ! さ、聡史ちゃん。……なんか私、おっ、おかしいっ」
「大丈夫。大丈夫だ羽弥。その感覚は怖くない。それが気持ちいいっていう感じだ」
 彼女を安心させようと、俺は空いた片手で彼女の頭を撫でる。それで少しは未知の恐怖感も抜けたのか、羽弥は手をだらりと下げて愛撫に身を任せた。
 やがて小刻みに震え、無意識の内に腰を引こうとするが、抱えられているので逃げられない。じたばたともがき、唾を飛ばして俺の首に抱きついた。
「はああ、はあぅ。んっ、……くぅっ! くるっ。あああ、何かくるよっ!」
「羽弥。それでいい、そのまま流されていいんだ。大丈夫、怖くないよ」
 決して指を動かすペースを上げてはいない。だが彼女には十分すぎる程の刺激のようで、体中を痙攣させている。そして一瞬ピタリと停止し、きゅーっと背を 仰け反らせた。
「はあ――ぁぁん……っ。すうっ、はあっ……。んふー」
 絶頂を迎え、脱力してぐったりと余韻に浸る羽弥。その顔は一端の女性のようでもあり、また、何も知らない幼児のようでもあった。
「んっ――」
 未だ快感は続いているようで、俺の上に寝転がったまま気持ちよさそうに目を細めている。水に濡れた短い髪を指先で梳ると喉を鳴らして悦ぶのが、子猫のよ うで可愛い。
 暫くそのままでいた後、羽弥はゆるゆると顔を上げた。そしてにっこりと微笑む。
「気持ちよかったか?」
「うん、凄かった。ちょっと怖かったけど。んっ――まだ、気持ちいい」
「そか。うん」
 俺としてはそれで終わりでも良かったのだが、彼女は楽しそうに笑いながら言う。
「じゃあ、次は聡史ちゃんが気持ちよくなる番だね!」
「お、う? いやでも」
「いいから。私で、気持ちよくなって」
 そして俺の了解も待たず、ベルトに手をかけて器用に前を外してしまった。こちらも確かにジーンズを押し上げる物が、さっきから暴れてしょうがないのでは あるが。
 頭の片隅で僅かばかりの葛藤があった。ただ、その間にも手が勝手に動いてしまい、ジーンズのチャックはいつの間にか下ろされていた。自分の所為じゃない みたいに言うな、と遠くの方で脳内天使の声が聞こえたような気もするが。
 目の前では、羽弥がわくわくしながら瞳を輝かせていた。俺は「コホン」と小さく、わざとらしい咳払いをして、おもむろにトランクスに手をかける。
「うわぁ――」
 平均以上では決してないのだが、こうして普通に驚いてくれると妙に嬉しかったりする。
 完全に臨戦態勢が整った俺の物を見て、彼女は硬直していた。
「羽弥」
「あ。う、うん。ええっと、……これが私の、その。ココに?」
 俺のペニスと自分の秘唇を見比べて、流石に尻込みする羽弥。ちょっと優越感があったのが我ながら情けないと言うか何と言うか。
「ん。いや、無茶はしないよ。ええと、後ろ向いてな」
「う、うん。――ひゃっ!」
「大丈夫。大丈夫だからそのまま足閉じて」
「うん。これで、いいの?」
 初潮は来ているとの事だったが、いかんせん羽弥の体は未成熟。流石に挿入は出来ないので足で挟ませる。俗に言う素股というやつだ。ぴっちりと閉じられた 秘唇に沿って俺のペニスがあてがわれる。
「ああ、それで良い。んっ……気持ちいいぞ。羽弥」
「ぁんっ。えへへ、嬉しい」
 愛液の量は決して多くない。だが幼い羽弥が太ももで挟んでいるというだけでかなりの刺激だ。
 ゆっくり腰を動かす。羽弥の瞳が潤み、体は小さく震えていた。その振動がひどく心地良い。血縁者を、しかも12歳の女の子を抱いているという事実が、衝 動に更に拍車をかける。
 薄い胸板を片手で抱え、もう片方の手でやはり小さな両膝を抱える。俺は座ったまま羽弥を持ち上げ、上下に揺すった。
 健康的な羽弥の太ももに挟まれたペニスが、余りの気持ちよさに悲鳴を上げる。
 パンパンと腰に打ち付けられる尻の感触も良かった。付きたての餅のようとは、きっとこういうのを言うんだろう。いや、弾力がある分、白玉だな。何故か羽 弥の尻に黄粉をまぶしたら美味そうだなどと、変な事を考えて少し笑った。
 だが下半身の状況は笑うどころではなかった。最早これまで、とばかりにペニスは限界を伝えてくる。のっぴきならない射精感が沸きあがり、俺は彼女を強く 抱いた。
「羽弥っ!」
「ん、聡史ちゃん。んんっ、聡史ちゃ……んんんっ」
 幼い秘裂を割らんばかりの勢いで、擦り上げる。そして互いの腰を密着させると、俺は羽弥の腹の上に精子を撒き散らした。
「うわあ、――これが、男の人の……」
 はあはあと肩で息をしている羽弥は、だが物珍しそうにそれを指で掬った。
「ん。ああ、分かるか? それが何か」
「うん。精子、だよね。これが私のお腹の中に入ると、赤ちゃんが出来るっていう」
「ははっ、そうだな。うん。でも、お前にはちょっとそれは早いかな」
 偉そうに言えた義理ではないのだが、満足感と倦怠感が同居する射精後の気分の良さに負けて、俺は妙に年上風を吹かせていた。
「んと、聡史ちゃん」
「おう、どした?」
「気持ち良かった?」
「ああ。とても――良かったよ。羽弥」
 俺が満足したのが嬉しいのか、羽弥は笑顔でしな垂れかかってきた。


 その後、2人で裸になって川の水を浴びた。水はとても冷たいが、火照った体にはむしろそれが気持ち良い。
 そして夕方まで川原で暇を潰し、日が暮れる前には家に帰った。
 釣り上げたマスは結局3匹。切り身にされてフライになり、予定通り食卓を飾った。量が少ないのでメインではなかったが。

 羽弥は今夜も俺の部屋で寝ると言う。
 叔母さんは苦笑しながらも、娘の頭をポフポフと叩いている。
「ごめんね。聡史くん。羽弥の相手は大変でしょ?」
「は、はは。いやまぁ、なんと言うか」
 俺は幾らか引きつった笑顔を浮かべて、最後に残ったニジマスのフライを口に放り込んだ。

「ごちそうさまです」



 ―――ひとまず、了

モ ドル