車内の風景

 

 高校1年の二学期も半ばを過ぎた、とある日。
 俺は見慣れない風景が後ろへ流れていくのを車窓からボンヤリと見送っていた。
 高速道路を走るバスは座席を通して心地良い震動を伝えてくる。
 これで車内が静かなら、学校に辿り着くまで眠っていられるのに――。
 ウンザリと溜息をついた俺は、マイクを片手に下手糞な歌をがなり立てているクラスメイトをジト目で眺めた。
 日帰りの研修旅行なのである。ワザワザ県外の美術館まで足を伸ばし、理解不能のオブジェを観賞するという学校の行事。
 要するに遠足だ。高校生になってまで遠足とは片腹痛いが、1年全員強制参加の行事であり、美術の単位にも関わるとなればサボるわけにもいかない。
 俺達は6人単位の班に別れ、美術館を歩き回り、パンフレットを貰って土産を買った。
 そして、今現在は、帰りのバスの中というわけだ。
 車内の人間は主に二種類に分けられる。
 前方に集まり、備え付けのカラオケを交代で楽しむ者。そして後方に座り、グッタリと座席にもたれて疲れを癒している者。前者がクラスの3/4を占め、俺を含む残りが後者だ。
 最後尾の一列並んだ座席はカラオケ組が荷物を放り出していった為に座れず、俺はその一つ前に座っていた。一人ではない。小柄な女の子と相席している。隣も前も空席なのに、何故俺が彼女と一緒なのかと言うと、別に深い仲だからではない。彼女、三島由希の提案による物だ。
 今の内に班別レポートの打ち合わせをしてしまおう、という。
 確かに良い提案で、俺に断る理由はなかった。俺と三島を含む班で、この面倒な課題に真面目に取り組めそうなのは、俺たち2人だけだからだ。今の内に打ち合わせを済ませておけば、今夜中にも我が班のレポートをでっち上げられる。
 しかしながら問題は三島の体力で、話をしている内に彼女は船を漕ぎ出した。ウツラウツラと。良くもまあ、カラオケ合戦真っ最中のバスの中で眠れる物だ。

 さて。
 話はバスが高速道路に乗り、サービスエリアでの一時休憩を挟んだ辺りから始まる。

 休憩後、バスに戻ると後ろの方で三島が手招きしていた。目を覚ましたらしい。自販機で買ってきたのか、缶入りの冷たい紅茶を手に持っている。
「えへへ、眠気覚まし。ゴメンね、私寝ちゃって……」
 可愛らしく舌を出した彼女は、短めのポニーテールを揺らして頭を下げている。苦笑した俺が彼女の隣に座った所で点呼が終わり、バスは再び走り出した。
 缶紅茶を飲み干した彼女は、だが物の10分ほどでまたも船を漕ぎ出す。全くもって益体も無い。
 とは言え、小柄で朗らか、仕草一つにも厭味の無い三島由希である。それが隣であどけない寝顔を晒しているという状況は、結構、いやかなり嬉しい物で。俺は窓の外の景色と彼女の寝顔を代わる代わる楽しんでいた。――のではあるが。
 それから数分後。三島はハッと目を覚まし、突然、眉根を寄せて俺を見上げてくる。
 何やら大層困った事があるようだ。
「ど、どうした?」
 小声で尋ねると、彼女はアワアワと取り乱し、やがて観念したようにショボンと下を向く。そして打ち合わせの為に広げていたレポート用紙に、ボールペンで何かを書きつけ、俺に向ける。
『おトイレ、行きたい。どうしよう?』
「ど、どうしようって。お前、さっきの休憩の時に行かなかったのか?」
 コクンと頷く三島。既に涙目だ。口は閉じて、だが変に波打っているのがギャグ漫画みたいである。中々の顔技を持っているな、とちょっと感心。
 しかし本人はいたって本気で困っているらしい。力なく俺の制服の袖を掴んでオロオロしている。
「仮にバス止めて貰っても、ここは高速だしな。下の道に出るまでガマンするしか」
 俺の腕をキュッと掴み、何かを訴える彼女だが、無言のままでは分からん。というか、俺にどうにかしろと言っても仕方が無いと思うのだが。
「と、とにかく頑張れ。最悪、高速を出たら一度、休憩を挟んでもらおう」
 俺の腕を掴んだまま俯き、うーと唸る彼女。だが、暫くして波が引いたのか、コクンと頷く。そして静かになる。
 だが、それも長くは持たなかった。
 再び顔を上げ、ノートに何かを書く三島。それをノロノロと俺に見せる。
『あとどれくらい?』
 あー、行きの時の時間を鑑みるに……。
「に、2時間は掛からないかと思う」
 これがかなりショックだったのか、彼女は俺の腕をギュッと掴み、またも涙目で何かを訴えている。加えて、フルフルと首を振っている。
 いや、否定した所で、時間が短縮されるわけでは無いんだが。と言うか、ダメっぽい。かなりダメっぽい。危険領域に入ってるっぽい。本人もの凄い困り顔だ。
 どうした物か。
 考えあぐねている間にも、三島は俺の右腕を力一杯掴み、必死に何かを耐えている。と思ったら、不意にグググと背筋を伸ばした。両足を思いっきり閉じてもいる。そして、そのまま5秒ほど。呼吸すら止めて体勢を維持。
「はぅ……っ! く、くぅ――。……ふぅ」
 かなり強い波だったが、かろうじて耐えたようだ。下を向いて呼吸を整え、再び助けを求めるように俺の顔を見つめてくる。
 最早決壊は時間の問題らしい。目に溜めた涙は、既にポロポロと零れ始めている。俺は俺で気が気じゃないのだが、それはそれとして。クラスメイトの女の子が真っ赤な顔で涙を零しながら上目遣いで見上げてくるという光景は、正直、かなりグッと来るものがあった。
 どうにか助けてあげたいが。何か上手い手はあるだろうか……?
 大音響のカラオケに顔をしかめながら、頭を働かせて考える。
 そして結論は――策無し。
 正直、出す物出さないと事態は収まらないだろう。そして出せる状況で無い以上、ここは耐えるしかない。だが「どうにも出来ません。頑張ってガマンしろ」と斬って捨てるのは余りに芸が無い。
 そこで俺は自分の鞄を漁り、空のペットボトルを取り出した。
「……」
「……っ!?」
 これにしろという訳ではない。こんなものを手渡されれば、三島としても耐えるしかないだろうという意味だ。流石にバスの中で、隣に男が座っているという状況で出すもの出したりはしまい。
 うううー、と唸りアメリカン・クラッカー状の涙を目から下げてカチカチ鳴らしている彼女には悪いが、ここは頑張って貰うしかない。
 というのに、――あろう事か。
 三島はキョロキョロと辺りを伺い、大多数の連中が前方の席に集まっている事を確認するや、ソロソロと自分のスカートを捲りだした。
 マジか!?
 愕然とする俺。ギョッと横を見ると、テンパッた彼女の目は完全に据わっていた。
 マジらしい。
 腰を浮かせて可愛い縞パンを脱ぎ、膝まで下ろしている。童顔に良く似合う薄いアンダーヘアや、その下のピタッと閉じたスジがバッチリ見えてしまっている。
「はふっ、はぅ……っ。んッ」
 だが当の本人は俺が横にいるのもお構い無しだ。というかそこまで気が回らないのだろう。紳士なら席を移動するか、少なくとも目を瞑るべきだが、そこはそれ、俺も男の子であるからして目が離せない。
 三島は細い足を開いて、股間にペットボトルを宛がうが、どうも角度が上手く定まらないようで難儀していた。座席に深く腰掛けているのが問題らしい。悪戦苦闘しつつ腰の位置を動かし、最後には殆ど座席に寄りかかるだけという格好になった。
 小さなお尻が、ちょっとだけ席に乗っている感じだ。
「うっ、うっ……く。……ひっ――あぅっ!」
 そしてスカートをたくし上げ、再びペットボトルを割れ目に添えるのだが。そこでバスの揺れに耐え切れず、グラリと身体が倒れた。その拍子に前の座席の背もたれにオデコをぶつけたようだ。スンスンと鼻を鳴らしている。
 まあ、衝撃で出るもの出ちゃわなかったのは、もっけの幸いかもしれないが。
「う、うう。あの……」
 ホッと胸をなでおろす俺に、三島は酷く情け無さそうな顔を向けた。隣で男がバッチリ観察している事に、今更ながら気付いたらしい。と、思いきや。
「お、お願い……。ちょっとだけ、支えてて」
 本気か? というより正気か?
「お願い。は、早く……して」
「わ、分かった」
 彼女の消え入りそうな声に俺の中の変な部分が反応し、思わず了解してしまった。顔を赤らめた女の子に「して」などとおねだりされるのは初めてであるからして。
 座席を区切る肘掛を上げ、三島にグッと近付いた俺は、彼女の小柄な身体を横抱きにする。俺の顎が三島の額にあたるくらいの密着度だが、これくらいでないとバスの揺れには対応できまい。
「あぅ……。んっ、あ、ありがと」
 彼女の方にも否は無いようだ。どう致しまして、である。
 そして失敗の許されないチャレンジが始まった――。
 三島がソロリソロリとスカートを捲り、腰までたくし上げる。既にパンツは下ろされているので、女の子の秘密の場所が丸見えだ。如何せん悪い気がして視線をずらすと、今度は制服の隙間から胸元が見えてしまう。即ち、可愛らしいブラジャーがチラチラと。
 下半身を露出させた女の子を抱きかかえているのだ。正直、エロい光景しか目に映りません。助けろ、誰か。いや、助けるな。
「ふっ、はふっ……。あ、あの――足が、足を」
「うん? あ……そ、そうか」
「ひぅ――ッ!! あ、ぐっ。くぅぅ」
 余りの状況に俺までテンパっている中、三島は両太ももを擦り付けてモジモジしている。どうも俺がグッと近寄りすぎた所為で、足が開けないらしい。そこで俺は、片手を伸ばし、彼女の片足をヒョイと持ち上げて自分の膝に乗せた。
 やってから気付いたが、実にとんでもない事である。確かに三島の両足はカパッと開きはしたが、これじゃ丸っきり何かのプレイだ。
 だが体勢を変える暇は無いようで、彼女は俺の膝に片足を預けたまま、苦悶の声を上げつつも股間にペットボトルを宛がった。
「はーっ、はーっ。……ん、んんっ。うぐっ」
 慎重に場所と角度を定めている三島の顔に変化が現れる。口が窄み、顎に梅干状の皺が刻まれた、その直後――。
 チョロチョロと何かの液体がペットボトルを打つ音が俺の耳に届く。いやもう、何かの液体というか黄金水というか尿であり、つまり、おしっこなわけだが。
 音は次第にジョロジョロになり、見た目にも勢いを増していた。女の子の割れ目、その中段あたりから不純物を含んだイエローのウォーターが流れ出ている光景に、頭がクラクラする。しかもその女の子は俺自身がガッシと抱きかかえているわけであり、これはもう傍目にはそういうプレイにしか見えないだろう。
 困った事に、俺自身の目から見ても、そういうプレイにしか思えないのだから。
「……ふぅーっ、んッ。んっ」
 やがて音が小さくなり、勢いもなくなって来たようだ。そして完全におしっこが止まったのを確認した三島は、スカートから手を離し、ノロノロとペットボトルに蓋をする。
 俺は俺で鞄からウェットティッシュとゴミ用のビニール袋を取り出した。そしてティッシュを一枚抜いて彼女に手渡そうとしたのだが、三島はペットボトルを手にしたまま動かない。おまけに俺の腕ごとフラリと背もたれに倒れこんでしまった。完全に放心状態だ。
 スカートは手から離れたとは言え、殆ど捲れたままで、一仕事終えた股間は丸出しのまま。片足が俺の膝に乗っている所為で、足も開いたままだ。
 困ったのは俺である。流石にこのままにしておくわけにはいかない。せめてパンツだけでも穿いてもらわないと、カラオケ組が荷物でも取りにきたら大変である。
 しかし――だ。その前にしなければならない事があるだろう。それは俺が片手に持つウェットティッシュが教えてくれる。
 三島の股間を、拭かないと。誰が? 本来なら当然、本人がすべきだが、その本人は放心状態でグッタリしている。
「う、うぐ……。恨むなよ」
 これも放って置いて良い物ではない。実際、彼女の割れ目から、僅かに残った尿が雫になって零れようとしているのだ。早急に拭き取る必要アリと見た。
 俺は意を決すると、片手に持ったウェットティッシュを三島の股間にそっと当てる。そして割れ目をなぞるように尿を拭き取る。
「む、むぅ」
 しかしながら、表面をさっと撫でるだけではダメなようだ。ちょっと指を押し込むと、ジワリと暖かい感触があった。
 ティッシュを離して見ると、おしっこを吸ったそれが黄色く変わっている。女は男に比べて尿道が短いと聞くが、それでも結構残るものらしい。
 俺は使用済みのティッシュをビニールに入れ、もう一枚、新しい物を抜いた。

 この辺で、三島由希の様子がおかしい事に気付かなかったのは、果たして俺のミスなのか――。

 再びウェットティッシュを彼女の股間に当て、丁寧に割れ目をなぞる。
 その行為が、純粋な手助けだけで行われたとは誰も信じないだろう。実は俺も信じない。俺は熱に浮かされたように、初めて触れる女の子の秘裂をきっちり撫で回していた。
「ふぅ……っ。んっ、あぅ」
 普段なら大問題であり、犯罪そのものなのだが。この時ばかりは触られた本人、つまり三島の方まで変になっていたのである。
 割れ目を撫でる指の動きに併せて、彼女は目を潤ませ、切なそうに俺の腕に抱きついた。そしてコテンと頭を俺の肩にもたれさせ、身を預けてくる。
 いつ頃からなのかは分からないが、三島は俺に触られて感じていたのだ。いわゆる性的な意味で。
「んっ、あぅ。わ、私――何か、おかしく……なって」
 この反応には俺もヒートアップせざるを得ない。既に2人の体温で冷たさを失っていたウェットティッシュで、彼女の綺麗な割れ目を執拗に撫で上げる。
「あっ、あ。そ、そんな事されたら……んっ。だ、ダメなのに――んっ」
 一擦りする毎に三島の方もテンションが上がっていくらしく、徐々に声は熱を帯び、高くなってくる。俺は思わず辺りを見回し、気付かれていないかどうか確認した。
 一番近くにいる者でも斜め前の更に前に座っている。しかも耳栓とアイマスクを装備して、軽くいびきをかいているようだった。余談だが、ソイツは姉御肌の女生徒である。豪胆なものだと、ちょっと感心。
 前の方では相変わらず大音響のカラオケ大会が続いているし、一応は大丈夫そうだ。が、油断は出来ない。
「み、三島。あんまり、大きな声出したらダメだって」
「んんっ。んっ、う、うん。わ、分かった。あの……だから、続き」
 スンスンと鼻を鳴らして哀願するように俺を促す彼女。本当に分かっているかはともかく、年齢が退行しているような仕草に、俺の中の何かが吹っ切れた。
 ヤバイ。コイツ――可愛い。
「お、お、おう。じゃあ、触るぞ」
「うん。んッ……はぅ。んっ、あ……気持ち、良い」
 俺は最早用済みのウェットティッシュをビニールに捨て、今度は指で直に触れる。
 左手を俺の腕にギュッと絡ませ、右手でペットボトルを胸元に抱き込んだ三島は、完全に俺の愛撫に身を委ねていた。
 恍惚の笑みを浮かべ、うっとりと目を細めてくれるのは嬉しい。が、正直、そのペットボトルから手を離すべきだと思う。中身アレだし。
 既に彼女の股間からはトロトロと愛液が漏れ始めており、俺の指を濡らしている。このまま続ければ、さっきとは別の意味で困った事になってしまうのだが。まあ、こうなってしまった以上は止められない。ここで後先考えたら負けだ。何に勝つのかはともかく。
「あ、あっ。んっ……はぎゅッ! んーっ、んっ……い、いいよぅ。んっ」
 クチュリ――と、実にエッチな音が耳に届くようになってくると、三島は声に抑制が効かなくなってきたらしい。また声が高くなってきた。が、彼女の方もマズイとは思ったようで、唇を噛んで堪えている。ただ、それも一瞬しか持たず、直ぐに頬を緩めてしまっていた。
 何かしら対策を取らなければならない。つまり口を塞ぐ方法を。
 指を不規則に動かしつつ、頭を捻る俺。何かを咥えさせたらいいと思うが、ハンカチ程度では口を開けば落ちてしまうだろう。ハンドタオルを喉の奥まで押し込んだら確かに声は出せないが、如何せん鬼畜っぽい。ペットボトルに目が行ったが、流石にそれは論外だ。
 だとすると、方法なんて一つしか無いじゃないか。
「あむっ!? ……っ! ……んっ、ん。あむ、ちゅ――んっ」
 俺は三島の肩を抱き寄せ、熱い吐息を吐き出している唇に吸い付いた。唐突なキスに面食らったのか、彼女は驚いて目を見開いたが、それも一瞬。直ぐに大人しくなり、むしろ積極的にこちらの唇を吸ってくる。
 唾液を交換し、お互い恐る恐る伸ばした舌先を舐めあい、俺と三島は暫く夢中でキスを続けた。
「ん、んんっ。んちゅ――。……はぁ、はぁ」
 呼吸の為に一度口を離し、だが距離はそのままをキープ。鼻と鼻が擦りあうくらいの位置関係だ。この位置が良い。いつでも口を塞げる、この位置が凄く良いっ。
 首尾よく喘ぎ声対策を完了させた俺は、彼女の肩に回した右手の位置をそっとずらしていく。細っそりとした二の腕、華奢な脇の下、そして緩やかに膨らんだ小さな胸へ。
「んあっ! ……あむ、んちゅ。んんっ、んっ」
 何処を触られようとしているか、俺の意図は向こうにも分かっていた筈だが、それでも声を上げてしまう三島。だが、俺は至近距離で待機していた自分の口で、咄嗟に彼女の口を塞ぐ。想定どおりに上手くいった。
 気を良くした俺は、そのままキスを続けながら三島の胸を優しく揉み始める。同時に、中断していた股間への愛撫も再開。唇、胸、割れ目の三箇所を刺激された彼女は、沸き上がる衝動が急に増えてきたらしい。震えながら身を捩っている。
「んーッ! んんーっ。……んぐ、ぷはあっ。あぁッ、あむ!? んっ……」
 性の快楽が全身を駆け巡っているのだろう。塞いでいた口を離すと、大きく息を吸い込んで、だがそれすらも刺激になってしまったのか、鼻に掛かる甘い声を上げる。勿論、俺はその声がバス中に響き渡る前に、またもキスで封をする。
 三島がモゴモゴと喚いているのを口の中に感じながらも、俺は両手を止めない。ブレザー越しに胸を揉み、股間の方は割れ目を少し開いて花弁、つまり小陰唇と思しき襞を擦る。
 と、俺の腕を掴む彼女の手が急に力強くなってきた。カリカリと爪を立てるように引っ掻いても来る。どうやら大分切羽詰ってきたようだ。
「あ、ぁ、あっ。わ、私……私、んッ! 気持ち、良い――あぅっ」
「そろそろ、イキそう?」
 割れ目の下方、僅かに開いた小さな膣口に中指をそっと差し込みながら、俺は彼女の耳元で訪ねた。それにキュッと目を瞑り、コクコクと頷く三島。
 さっきまでの嬌声が鳴りを潜め、むしろ歯を食いしばっている所を見るに、本当にもう少しのようだ。
 俺は胸へ伸ばした右手を肩までずらし、彼女の上半身を強く抱き寄せた。
「んっ、んんッ! くふっ……あ、もう、もうッ! ダ――あむっ、んっ」
 思わず「もうダメ」と叫びそうになった三島の口をキスで塞げば準備完了だ。
 左手は、未だ穢れの無い綺麗な膣を傷つけないよう、入り口に差し込んだ指を優しくスライドさせる。同時に親指で小陰唇の最上段、即ちクリトリスを軽く押す。
「んんん……んぐっ、――んむ、んんんッッ!」
 2・3回、陰核への刺激を与えた所で、ヒクヒクしていた膣口が俺の指を咥えたまま、キューッと閉じる。それと前後して三島の身体はガクガクと痙攣。背筋は一気に仰け反った。
 絶頂に達したのだ。
「はぅ……はぅ、んあ。――ふぅー……」
 そして暫く硬直していた彼女だったが、一度大きく深呼吸すると、糸が切れたように崩れ落ちた。瞳はボンヤリとなり、俺の腕の中でグッタリと伸びている。
「三島? おーい、三島さん?」
 呼びかけても返事が無い。ただ口をパクパクと動かすだけだ。よほど強い快感だったのか、全てを出し切ったような表情は、恍惚を越えてアルカイックスマイルじみている。ここまで気持ち良くなれるというのは、少し羨ましいかもしれない。
「……んっ。……あぅ」
 快楽の波は未だ継続中のようで、時折、膣口に入れたままの指は、キュッと抱き締められていた。
 俺は、彼女の膣が収縮を止めたのを見計らって指を抜き、抱きかかえていた上半身を背もたれに寝かせた。
 そして改めて三島の状態を眺める。
「あー、これは。いやはや」
 果てるだけ果てた彼女は、幸せそうな顔で目を閉じ、身じろぎ一つしない。荒い呼吸で肩が上下しているが、それだけだ。股間から零れた愛液で下半身がベタベタなのに、である。
 どうも感覚のメリハリが大きい体質らしい。さっきの放尿後も同じように放心していたし。
「ッて事は。後始末はまた俺か……」
 まあ、今度ばかりは自分に責任があるので仕方ないのだが。
 俺は左手で頭を掻こうとして、だが指がトロトロになっている事を思い出した。先ずはこの指から拭いていくか。
「……ん。ちょっと、しょっぱい」

   /

 さて。
 三島が己を取り戻したのは、俺が彼女の足を完全に拭き終わってからである。
 うーん、と可愛く唸って目を開けた彼女は、先ずバッチリ見えちゃってる下半身を眺め、次いで不思議な顔で首を傾げる。そして急に目を見開くと、顔を真っ赤に染め、閉じた口を波打たせて俺を見た。
「えーと……とりあえず、コレ」
 そして俺の手渡したハンドタオルで取り急ぎ股間だけを隠し、現状を再確認中。尚、例のペットボトルは今現在、俺の側のドリンクホルダーに刺さっていた。ボンヤリ状態の三島が落っことしたのを俺が拾ったからだ。
 記憶を回想しているのか、彼女の表情がクルクルと変わって面白い。急に引き攣ったかと思うと、次の瞬間にはふにゃっと崩れ、かと思うと愕然と天を仰いでいる。
 最終的にどういう考えになったかイマイチ不明だが、三島はおずおずと俺の腕を取り、抱き締めた。
「あー、いや嬉しいけど。三島?」
 何やら凄い好感度の表れのようだが、顔だけはそっぽを向け、拗ねたように唇を尖らせている。
「何だか結果は同じになっちゃってます」
「ふむ?」
 彼女のセリフに少し頭を捻ったが、なるほど、言いたい事は分かった。本来のミッションである、三島のトイレ云々はちゃんと果たせたが、代わりに別の液体がダダ漏れだ。
 結果的にスカートはビショビショ。守れたのはパンツだけ。
「これは……勝負に勝って、試合に負けたという事でいいんだろうか?」
「どっちも負けちゃダメだったのにーっ」
 パンツを膝まで下げたまま、ポカポカと俺の胸を叩く三島。
 さて、今度は学校に着くまでに彼女のスカートを乾かす方法を考えなくてはいけないようだ。
 カラオケ大会はまだ続いているし、とりあえず――脱がすべきかね?



 ――了。

モ ドル