魔眼屋本舗

 目に映るあらゆる人間を自分の思い通りに出来る。
 この素晴らしさよ――。

 相手の本来の意思を完全に無視し、自分の好き放題にする事に全く罪悪感を感じなかったと言えば嘘になる。だが、悪徳によって満たされる充足感はそれを大幅に上回り、むしろ心は暖かさすら感じている。

 ああ、ならばやはり。俺の本質的に悪い人なんだ。
 魔眼という超常の力を持っている自分だから、普通の人間がひざまずくのは当たり前、などとは思わない。どこまでいっても自分は普通の人間である事に変わりはないだろう。それに、吸血鬼が人の血を吸わないと生きられないのとは違い、女の子を好き放題しないと狂ってしまうという訳でもない。
 それでも。こんな事をして理性を失わず、喜んでいる自分は、やはり根っからの悪人なんだろう。
 だって、仕方ないじゃないか。こんなにも気持ちよくて楽しいんだから。

 というような事を、部室で女子の先輩にペニスを舐めさせながら考えた。
「あの――ゴメン。下手だった?」
「え? い、いや、そんな事ないスよ。凄く気持ち良いです」
「う、うん。じゃあ――」
 はむ、と決して大きくない口を開けて猪原先輩は俺の物を咥え込んだ。
 フェラの良し悪しなんてはっきり言って分からない。彼女が男の物を咥えるのが初めてなように、俺も女の子に咥えられるのは初めてだからだ。
 でも、女の子の柔らかい舌がペニスに触れる感覚には言い様のない快感がある。
 暖かい口内で唾液に塗れる自分の物を起点として、背筋から首筋まで、まるで何万もの快楽の粒が這い上がってくるような。そんなゾクゾクとした気持ちよさ。
 なるほど。これは病み付きになりそうだ――。
 他の子にもやらせてみよう、と決心しつつ、俺は先輩の口の中に今日二回目の精を吐き出した。

「んっ、――んっ」
 幾らか顔をしかめながら、だが事前に言ってあった通り、彼女は俺の精液を飲み込んだ。
「ご苦労様です。はい、コレ」
 けほけほとむせる先輩に、あらかじめ買ってあった烏龍茶を渡す。彼女を苦しめたいわけでではないし、女の子の口が精液臭いというのは全く持って頂けない。それに何より、このままだとキスをした時に自分の精液を味わってしまう。そこにたっぷり出した自分が言うのも何だが。
 烏龍茶で口を濯いだ先輩に、未だ彼女の唾液で濡れたままのペニスをハンカチで丁寧に拭いてもらい、おまけにトランクスに仕舞ってもらい、ズボンのチャックまで閉めてもらった。
 普段から世話好きで甲斐甲斐しい人だけに、フェラをさせている時より楽しげな顔をしていたのが印象的だ。生来はきっと良い奥さんになるだろう。
 思わず未来の彼女の旦那に嫉妬。
 俺はやや乱暴に彼女をかき抱くと、やはり乱暴にその唇を吸った。
 暫し、くちゅくちゅという舌と舌が絡み合う音が部室に響く。思うままに彼女の口腔を舐め尽す事約5分。いい加減、先輩がぐったりした頃、俺はようやく手を離した。
「ぷはぁ――」

 良し、満足。
 思う存分、ディープキスを楽しんだ後、俺は彼女を魔眼から解放した。記憶をいじるのも忘れない。今日の放課後は部室で後輩とのんびりお茶を飲んだ。そう思い込んで、彼女はごくごく普通に家路につくだろう。

 さて。
 約束の時間まで、まだ結構な間がある。どこかに暇をしている可愛い女の子はいないものだろうか――。


魔眼屋本舗 /2 実践と過程


 私立清祥大学付属慶光学園。俺と妹が通う学校である。中高一貫でそれなりに大きな規模を誇っている。昔からお坊ちゃんお嬢さんの学校というイメージがあり、また実際に良いとこの子女が多数通う事から、並ではない額の寄付金が集まる金持ち校でもある。
 学力よりも人格を重んじる校風のお陰で「ぽややんでバカな生徒が多い」と、他校生から陰口を叩かれることもある。が、実際人の良い穏やかな連中ばっかりなのは否めない。成績はというと、上位陣と下位グループでかなりの差があり、近隣の予備校は学力的な格付けに難儀しているという話も聞く。

 高等部2年B組の俺こと福沢幸一は、そんなぽややんな生徒の一人である。成績は中の上、部活は推理小説同好会に所属。両親は共働きで、前述の通り妹が一人いる。
 最近、この近所に裸コートという昔ながらの変質者が出るとの事で、妹の部活動が終わるのを待ち、2人で帰宅するようにしている。
 その待ち時間。今までは部室や図書室でまったりと本を読んだりする以外にやる事がなく、暇でしょうがなかったのだが、ちょいと状況が変わったのはご存知の通り。今日の所は、折りよく一人だった部長の猪原陽子と放課後のアバンチュールを楽しんでいた、というわけだ。
 そのまま彼女ともっと深く楽しんでも良かったのだが、それも芸がない。
 そこで上記の『さて』に繋がるのである。

 部室棟を出て、のんびりと校内を散策する。勝ち組幻想がおかしな形で現実になって以来、こうして放課後の校舎を目的もなく歩くのが楽しくなった。
 それは獲物の女の子を探す、という意味でなく(いや勿論それもあるのだが)ただ歩いているだけで楽しいのである。
 まあ、そのお陰で――、
「あ、最近妙に丸くなった福沢くん」
 などと級友に言われるようにもなった。

「何やってるの? プールの近くで。あ、覗き? なら良い場所知ってるよ」
「違うわい。ただの散歩だ」
 唐突に声をかけてきたのはクラスメイトの新島里美。男子に対しても全く物怖じせず、明るくてゴシップ好きで新聞部という、ある意味分かりやすい人物である。隣町の駅前にあるフォトショップの娘で、常にカメラを持ち歩いているという点でもキャラ的に分かりやすい。中等部入学以来、何度となく同じクラスになった事があり、俺にとって彼女は性別を超えて友人という立場にいる。
 ――のではあるが。
「え? 何よ。うわ、私見られてる。スッゴイ見られてるー」
 よくよく見ると結構美人だ。女として。くねくねと体を揺らし、朗らかに笑っている彼女は、女子の割りに背が高く、出る所は出て引っ込むところは引っ込んでいる。やや釣り目がちだが、くるくると変わる表情が冷たい感じを打ち消している。
「うん。よし新島の」
「へ? 何さ福沢の」
「Hしよう。今すぐ」
「はあ? はあッ!?」
「ついては、どっか人気のない場所知らないか?」
「う、うわー! 何そのセクハラ発言! 5年も君を見てきたけど、いや驚いたー」
 びっくりよ、と体中で驚きを表現しているが、本気にはしていない。それもそうだろう。溜息ばっかりついている地味な男。それが自他共に認める俺の社会的評価だ。急にこんな事を言っても新手の冗談にしか聞こえまい。
「なーによ福沢の。高二になってキャラ変えるの? うーん、セクハラキャラは君には荷が重いと思うんだけど。一体どういう心境の変化よ」
「いやあ、それがな」
「うん。ほれ、お姉さんに話してみ」
 俺はしっかりと新島の目を見つめ、瞳にぐっと力を込めた。
「マジなんだ――」
「う……ん?」
 魔眼を発動。彼女の意識は混濁し、しかしそれも一瞬で、直ぐに理性を取り戻したように見える。だが魅了の力はきっちり働いている。これで思うままだ。
「で、どうかな。良い場所ある?」
「んーと。……あ、室内プールの放送席なんかいいかも」
「放送席? ああ、アレか。でも入れるのか?」
「問題なしですよ、旦那!」
 そう言って彼女は、常に身に着けているウェストポーチから鍵の束を取り出した。
「備えあれば憂いなし、ってね!」

 聞く所によると。鍵集めは彼女の趣味の一つらしい。学校のいたる所の施設の鍵を、隙を見ては型取りし、プラスチックに似た特殊な素材で複製を作るらしい。「A液とB液の割合に秘密があるんよ」と言っていたが良く分からないのでスルーした。で、それを元に金属のちゃんとしたヤツを作ってしまうのだそうだ。
「ウチ、写真屋だけど鍵の複製もやってるから。腕前はじいちゃん仕込みなのさ」
「なるほど」
 そう言われてみれば、彼女の家『フォトショップ・ニイジマ』には「合鍵承ります」の看板があったように記憶している。
「て言うか、いいのかそれ?」
「いやあ、修行よ修行」
「へえ。じゃあ、カメラ屋継ぐんだ。で、鍵作りの修行と」
「いや泥棒の」
「おまわりさーん! ここに犯罪者が……」
「いやー。やめてー」

 などなど、割と笑えないかもしれない笑い話をしつつ、俺達2人は室内プール施設へと足を踏み入れた。ウチの学校は総じて学内の設備が立派だが、その中でもプールは白眉である。
 競泳用50mプールの他に飛込競技用プールがあるのは当たり前で、上を見れば電光掲示板があり、プールの奥には更衣室の他に選手控え室、審査員席などがある。当然、観客席もあり、その最上段の一角にプール全体を見渡せる放送席まであるのだ。
 中体連やインターハイでは水泳県大会の会場となる事でもお馴染みとなっている。

 新島の案内で施設3階まで上がり、そこから観客席の更に外周の廊下を通って、その奥にある階段へ。ココを登ると放送席で、普段はまず人が来ることはないとの事。
「良く知ってるなあ。いつこんな所来たんだ?」
「いやだってさ。入ってみたいじゃん、こういう所。面白そうだし、眺め良さそうだし。で、去年のインターハイん時に放送部の友達の手伝いを、ね」
「ほう。その時に合鍵作って。以来、隠れ家にしてる。と」
「あはははは。いや、偶にだよ。偶に。エスケープして昼寝したりとか。いや、ははは。鋭いね、今日は」
 相変わらず笑いながらの道中ではあるが、人の目がなくなった辺りで新島は腕を絡めてきた。魅了の効果バッチリ。社交的な性格もあって、割と男慣れしてるのかと思いきや、実はそうでもない事は、赤らんだ顔と所々で裏返る声が語っていた。他人のゴシップには喜んで飛びつく癖に、自分自身に関しては意外とそうでもないようで。
 二の腕に当たる結構豊かな膨らみの感触もあって、俺は非常に気分が良かった。

 カチリ、と小気味良い音を立てて鍵が開き、新島が重い防音扉を引く。
「へえ、こんなんなってるんだ」
「どうよ。面白いでしょ? あ、電気は点けないでね。バレるから」
「うん。了解」

 小ぢんまりした部屋の中にモニターやらビデオやらの機材が整然と並んでいる。正面の机の前は大きくて厚いガラス窓になっており、薄いカーテンが引かれている。
 なるほど。眺めが良い。カーテンの隙間から水泳部の練習風景が良く見えた。
 因みに、この部屋は丁度照明の死角にあるようで、どこからも直接の光が当たっておらず、薄暗い。お陰でプールの方からはこの部屋の内部が見えないが、こちらからはカーテン越しでも向こうの様子が見える。おまけに防音なので多少騒いだ所で音が漏れる事も無い。

「お、さちがいる。おお、泳いでる泳いでる」
「いや、そりゃ泳ぐでしょ。水泳部なんだし」
「そう言えばそうだった」
「……で、さ。その――」
「うん? 何さ」
「いやね。その、リクエスト通り、ココまで来たんだけど……」
 妹は普通に泳いでいたが、新島は目が泳いでいた。期待半分、不安半分といった所らしい。
「その、さ。――す、するのかな?」
「ああ! するとも!」
 俺は良い笑顔でサムズアップを見せ、ポンと彼女の肩に手を置いた。

 ウェストポーチを外させ、スカートを脱がす。下着はアクティブな彼女らしく、スポーティーなグレーの無地。余りに想像通りで思わずクスリと笑ってしまった。

「い、いやね。私だって、可愛いの穿く事もあるんよ。で、ででも今日、君とこんな事するなんて思ってなかったから……」
「ああ。別に気にしなくても、これはこれでお前らしくてとても良し」
 つつつ、といわゆる土手の部分を人差し指で軽く撫でる。途端、新島の顔は更に赤く染まった。
「Yシャツ、脱いでくれるか? あ、ボタンは下の方から外してくれ」
「うん……。って、ふふふ。注文細かいね」
「黙らっしゃい。――んむ」
 言いつけどおりYシャツのボタンを外し始めた新島。俺はそんな彼女のネクタイを外しつつ、おもむろに口付けをした。
「あ、ん。いきなり――だね。んっ、んむ」
 僅かに聞こえてくる水泳部の練習の声をバックに、衣擦れの音と、甘い嬌声が部屋を満たす。
「んー。あむ、んッ、ん。……もっと」
「ん、了解」
 一旦は口を離したが、新島はにわかに火が付いてしまったようで、俺の頭を掴み、自らキスをせがんできた。
 お互いに唇を吸い合う力が徐々に強くなる。やがてどちらからともなく舌を差し出し、そしてそれが絡み合う。
「んッ! んふッ、ん。――んグッ」
 溢れて零れそうになる唾液をお互いに飲み合う。
 

「はぁ、はぁ。……はぁ、ファーストキッス、……奪われましたー」
「奪いました?」
「うー!」
「いや、威嚇されても」
 意外ではあったが、考えてみれば中1で知り合って以来、彼女に恋人がいるという話は聞いた事がない。ここに来る途中でも思ったが、どうやら新島は男友達はいても、いわゆる男関係の経験はウチの妹と同レベルのようだ。つまり全くのゼロ。
 軽く目を瞑り、「ほふー、ほふー」と息を吐いてキスの余韻に浸っている彼女を前に、俺はコイツをどうしてやろうかと考えた。
 初めて、か。じゃあやっぱり優しくしてやらないとダメだよな――。
 先ず肩や背中辺りからゆっくりと愛撫を始めて、怖がらせないように優しく胸を揉んで、正常位でなるべく痛くないように――。

(と、考えるのは今までの俺ッ!)

 カッと目を開き、既に全てボタンが外されていた彼女のYシャツをさっと脱がす。
「えっ?」
 思わずこちらを向いてポカンとする新島めがけ、俺は魔眼の催淫作用を強めに叩き込んだ。
「ぁ……。ん――? んああああンッ!」
 効果は覿面。彼女は突然体を激しく震わせ、内股になって身悶えし始めた。
「やぁ!? 何コレ!? ぁ……、あぁあぁぁ」
 まともに立っていられないようで、爪先立ちになり、トイレを我慢するようにその場で足踏みを始める新島。だが股間を押さえようと、そこに手が触れた途端、激しい快感に襲われたようで、ついにその場にへたり込んだ。
「あ、あ、あ、あああッ――ッ」
 女の子座りになった彼女だが、冷たい床の感触すら快楽に変わってしまうらしく、必死に腰を浮かせようとしている。だが、力が入らないようで、次第に動かなくなる。
「ふっ、ふあぁッ! ――ふ、ふく、ざわッ、くん」
「おうよ。新島の」
「ね、お願い。――お願い、何とか、して……」
 俺の顔を見つめ、哀願する新島。普段は吊り上がった目がトロンと垂れ下がり、口の端からは涎が零れている。
 吐息は熱く、その表情は、エロいという言葉すら生温い。
 俺は人差し指を彼女の頬に当て、ゆっくりと唾液を拭取ると、目の前でそれを舐めて見せた。
「新島。お前、今凄い顔してるぞ」
「やぁぁぁっ。お願い――意地悪しないで……」
「ん。了解了解。可愛いなお前」
「あッ、ああ――あっ!」
 自分のYシャツを素早く脱ぎ捨て、下着に靴と靴下というマニアックな格好の新島を抱え上げ、椅子に座らせる。前のめりに倒れそうになる彼女を片手でささえつつ、もう片方の手で自分のベルトを外し、俺はズボンのチャックを開けてトランクスからペニスを放り出した。言うまでもなく固く屹立している。
「さて。何とかして欲しければ、これを口でだな……あ、ゴメ。ウソウソ」
 折角なのでフェラをさせようという腹だったが、如何せん新島の様子がヤバすぎた。焦らした俺の顔を見つめつつポロポロと涙を流している。急激に高まった性の衝動に、もうにっちもさっちもいかないらしい。
 俺は椅子に座り、タラタラと愛液を垂れ流す彼女の陰裂に手を伸ばし、おもむろに指を挿入した。
「んああッ!! ああッ、ああッ!」
 途端、全身を震わせる新島。ガクガクと痙攣し、力なく俺の手を握ったかと思うと、ガクッと力を抜いた。
「ふーッ、ふーッ……」
 ちょっと指が入っただけで絶頂を迎えてしまったようだ。酸素を求めて大きく呼吸をしている。目の焦点は完全にどこかに行ってしまったようで、瞳は虚空を向いて呆としていた。
「んッ――。あ、あぁ……また、ダメ、――くる」
 一度いって少し落ち着いたなら、今度こそフェラを。と思っていた俺の目論見は、だが今回もご破算になった。
 再び新島のボルテージが上がってしまったからだ。またもや特急で。
 俺の指を咥えたまま、彼女はそれにすがるように体をくねらせ、しきりに悶えている。途絶える事無く体を震わせ、犬のように舌を出して甘い声を上げ続け、虚ろな目で俺を見上げた。
「ねえ……お願い、お願い」
 流石に指がちょっと入っているだけという状況に飽き足らなくなったらしい。もっと刺激が欲しいという涙交じりの哀願。
 そんな顔を見せられては俺の方も堪らない。彼女の膣口を傷つけないよう、慎重に指を突き入れる。そして第二間接辺りまで入ったところで引き戻す。
「あはっ! あああッ、うあッ。……あ、あ、もっと! んあ、もっと!」
 新島は俺の腕を抱きしめて幼児のように駄々をこねた。「気持ち良いか?」と耳元で尋ねると、コクコクと顔を縦に振る。
 さて、ボルテージが上がっているのは新島だけではない。俺は俺で、最早入れて出さなければどうにも納まりがつかなくなっている。
 椅子に座り込んでいる彼女の足を両腕で抱え、持ち上げて正面の机に下ろす。これで新島の股間が丁度、俺の腰の真ん前に来た。
 新島の陰裂にピタリとペニスをあてがい、俺はそこで一旦停止。
 彼女はゴクリと唾を飲んで接点部を凝視していた。
「じゃあ、入れるぞ?」
「――ッッ!」
 足を持ち上げ、開かせたまま、俺は新島の耳元で囁いた。ビクビクと震えながらも首を縦に振る長年の友人。彼女とは5年の付き合いだが、コイツでもこれほど淫らな顔をするのかと、妙に感心する自分がいた。

「――くぁッ! あぁあああ!」
 トロトロになっている新島の大事な場所に、俺は躊躇なくペニスを埋め込んだ。押し留めようとする何かを引き千切り、絶叫する彼女に構う事無く。足を掴んで、一気に奥まで。コツンと壁に当たる、いわゆる一番奥まで。
「あ、あ、ぐ。痛――ぎッ……痛ッ」
 痛かろう。どれ程愛液を分泌していても、どれ程力が抜けて柔らかくなっていても。文字通り身を引き裂かれるのは痛かろう。
 流石にそのままガシガシ動くのは気が引けて、俺はじっと彼女の膣内温度を感じるだけで留めた。
「あー。やっぱ痛いか? 無理そうなら止めるぞ?」
「ふっ、ふうっ! ちょ、まっ……」
「えっと、どうする?」
「いや……大丈夫。痛いッ――けど、だんだん……んッ」
 暫くは苦痛に顔を歪めていた新島だったが、魔眼の催淫効果は確かだった。俺が彼女の体をゆっくりと撫でている内、快楽が痛みを紛らわせ、むしろその比率が逆転しつつあるらしい。彼女は次第に甘く鳴き始めた。
「くぅんっ……。ぁ、あンっ――き、気持ち……いいッ」
 未だ静止したままの俺の胸にすがり付いて、鼻面を擦りつけ、鎖骨の辺りを甘噛みしている。
 意外や意外。アクティブ且つ明朗で知られる新島里美は、一皮向くと子犬系甘えキャラだったのか――。
 割と本気で驚いたが、くぅんくぅんと鼻を鳴らして俺にしがみ付く彼女は、まことに持って可愛らしく、普段のギャップともあいまって妙にグッっとくる。
「新島の。そろそろ、動くぞ」
「んッ! はあ! んあ、あ、ぁああ! そ、んなッ……!」
 とは言え。コイツへの対応は『いきなり激しく』である事に変わりは無い。そもそも俺自身がこれ以上耐えられない。
 下から太ももを抱え、リズミカルにパンパンパンと抽送を始めた。愛液が溢れ、飛び散るほど激しく。
「あっあっあっ! ふくっ、ざッ……わ、君! あッ、ぁぁあ!」
「どうしたッ!? 新島」
「あッ、うあッ! んあッ、気持ち……良いッ! ひゃあ――!」
 気持ち良いという言葉には嘘偽りは全く無い様で、彼女の膣内は初めてにも拘らず震えるほど柔らかく、肉の襞が俺のペニスに絡み付いて離そうとしない。愛液の分泌もまた留まる事を知らず、パンと1回腰を打ちつけるごとに狭い放送席内に飛び散った。
「うあ、あ、……わ、私、もう――もうッ」
 新島の高まりは最高潮。彼女の下の口はエライ勢いで俺のペニス締め上げ、打ち付けている筈のこっちが、むしろ吸い込まれているような錯覚にすら陥る。
「い、いいぞ! 新島、いっていいぞ!」
 中にだしたらマズイんだろうなぁ、とは頭の片隅で思ってはいるのだが、彼女の足が俺の腰に強く巻きついている為、全く持って離せそうにない。
 いやもう、これは仕方ないよね――膣内で出しても。
「という訳で俺もいきそうだ! 中に、中に出すぞ」
「あ、あ、あ! うぁ、あッ……ん」
 途端、ゾクゾクと震える新島。中で出されるというイメージを、ポジティブに受け取ったのか、体中でぎゅうと俺にしがみ付いてきた。
「んっ、んあっ! あ、ぁ、んぁ――ああああああああッ!」
 ズムと彼女の中に深くペニスを埋め込んだ一突き。それでついに達した新島は肺中の空気を全て振り絞ったかのような絶叫と共に果てた。
 僅かに遅れて俺も射精する。ドプドプと新島の狭い膣内をすっかり満たす勢いで放出される精液。本日3度目の射精だというのに、相当な量だ。
「ん、……んふぅ。福沢、君――」
 たっぷりと精液を中で出された新島は、未だ小刻みに震えながら、うっとりとした顔で再び俺の胸板に顔をうずめた。ちなみに足は俺の腰に巻かれたままだ。体を離そうとしたら悲しげな顔でいやいやと首を振るのだから、いやもう、困ったね。HAHAHA!
 まぁ、普段のはっちゃけぶりが鳴りを潜めて、子犬のように甘えてくる新島が可愛くないはずもなく、俺は暫くの間繋がったまま彼女のしたいようにさせていた。

   /

 さて。新島の処遇であるのだが。
 これからも時々可愛がるのは勿論言うまでも無い。だが、こいつの行動力と情報力と、何より学園施設の鍵は是非とも欲しい。3点セットで、だ。
 影ながらではあるがパートナー役を務めてもらおう。だが力を借りたいその時に、その都度いちいち魔眼で落とすのは面倒。故に――心の奥深くにまで俺に対する服従心を植え付けてしまおう。
「と思うのであるよ。新島の」
「え? いいんじゃないかな。福沢の」
 良し。本人の了承も取ったところで。俺は彼女の瞳を除いて催眠作用を発動。俺の言うこと何でも聞けよ。俺の為に働けよ。俺以外の男を好きになるなよ。と、繰り返し彼女の心に刻み込んだ。
 これでコイツは表面的には今まで通りだが、魔眼を発動させる必要もなく、俺の言うことを何でも聞く、可愛い子犬ちゃんである。いやもう、都合の良い催眠術万歳。超万歳。

「じゃ、俺はさちの練習が終わるの待ってるから」
「うん。了解」
 事の後、持っていたティッシュでお互いの体を綺麗にし、部屋に残ったセックスの痕跡もふき取って、俺たちは放送席を出た。
 別れ際、新島が名残惜しそうに俺の腕を取る。
「あー、あのさ。福沢君」
「んあ? どうした」
「やー、そのさ。アレよ……、その。また、してくれるよね?」
 そっぽ向いたり俺の顔を見たりしつつ顔を赤らめる彼女。うむ。実に素晴らしい。俺は爽やかな笑顔をきめながら、グッと親指を立てて見せた。
「無論だ!」
「無論がでたーッ!」
 ひゃっほう、と踊り上がる新島は「子宮[おなか]を空かせて待ってるからねーっ!」と言い放ち、そのまま上機嫌で去っていった。

 正直、子宮にそのルビを振るのはどうなのか。
 残った俺は、頭をよぎるメタな疑問に、暫し、その場から動けずにいた。



 ――続く。

モ ドル