魔眼屋本舗

 振って沸いた幸運。なんの苦労もなく、ただあるがままにあるだけで大きな幸運を手に入れる。どんな聖人君子でも、生きた人である以上、きっと一度や二度はそんな夢を見るだろう。
 拾った宝くじが大当たり。その金を元手に株で大儲け。数百の企業を手中に収め、寝転がっているだけで莫大な収入があり、南国のプライベートビーチで金髪美女をはべらせてトロピカルなドリンクを啜る。
 俺こと福沢幸一も、そんな勝ち組人生幻想に魅せられた一人だ。
 齢17にして昼日中から公園のブランコを漕ぎながら溜息をつき、そんな振って沸いた幸運の夢ばかりみる自分が実にダメな人間である事は百も承知。しかしながら、折角の連休を予備校通いに当てるより、公園でブランコを揺らし白昼夢を見るほうがまだマシだ。それが幾ら非生産的であると分かっていても。

「――良い天気ですね」
「はぁ」

 隣には、いつの間にか見ず知らずの中年男性が、やはりブランコを揺らしていた。くたびれたスーツ。よれよれのネクタイ。無精髭に曇った眼鏡。見た感じ、リストラされて2年、ついに再就職を諦めてホームレス生活に突入寸前といった風情である。
 前途のあるなしに関わらず、いい若者が関わっていい種類の人ではない。だが妙に話は弾んだ。同志なのである。振って沸いた幸運幻想の。
 お互いの埒も無い夢を語り合うのは楽しかった。「バカな夢ばっかり見るな」と一笑にふさず、心行くまで内に秘めた勝ち組の夢を話し合える人と出会ったのは、初めてだったのである。

「福沢さん。実は私、吸血鬼なんです」
「吸血鬼ですか」

 日が暮れるまで語り合った彼は、おもむろに自分の秘密を語りだした。無論これも「もし自分が吸血鬼だったら」という類の話だと思った。だからこそ、俺は笑わずに聞いたのである。
 500年生きて、日の光も克服し、だがついに幸せには恵まれなかった。そろそろ自分はこの世から消える事にする。ついては、最後の友人である俺に一つ贈り物をしたい。
「魔眼です。いわゆる魅了の」
「魅了の魔眼ですか」
「はい。私は小物なので大した力はありませんが、それなりの催眠作用と催淫作用、それと簡単な記憶操作くらいが出来ます」
「それはまた。良い物ですね」
「あなたなら、この力を何に使います?」
「可愛い女の子にHな事をしますね」
 これでもか、と言うほどの本心である。笑わず、ふざけず、ただ心に浮かんだ願望をストレートに。
 その直情的な答えが、彼のツボにはまったらしい。
「良かった。貴方は思った通りの人だ。貴方ならきっとこの魔眼を正しく使ってくれる」
 感じ入った様子の彼は、暫く天を仰いだ後、じっと俺を見つめた。
 途端、チクリと目に痛みがさす。
 慌てて目を擦る。だが擦るほどに眼球がジクジクと痛んだ。
「5分もすれば痛みは治まります。じゃあ、さようなら福沢さん。私の最後の友達」

 見ず知らずのキチガイの相手をした自分がバカだった、とその時は思ったが。夕焼けの中、次第に灰になっていく様を見せられては信じる他はない。
「え、ちょっとッ!」
 目の痛みで涙が零れるが、俺ははっきりと見たのだ。頭のてっぺんからサラサラと形を失っていく名前も知らない中年男性の姿を。

 これが、俺が魔眼を手に入れた経緯である。

 ある日、公園で吸血鬼を名乗る中年男性に不思議な力を貰った――。
 と、簡潔に云えば一行で済む話に付き合ってくれてありがとう。
 以下、本編です。


魔眼屋本舗 /1 経緯と実験


 さて。消えてしまったおっさんの事など、正直どうでもいい。問題は貰った魔眼とやらが上手く働くか。そしてどれほどの物かだ。不思議な事に使い方は分かる。それ以前に、これが本物であると確信している自分に多少驚きはしたが。
 無論、変なクスリでも嗅がされて頭がおかしくなっている可能性も否めない。
 ならばどうする? 先ずは実験だ――。

 家に帰り、自室で練習を試みる。相手は1/144ゲルググ。要するにプラモデルだ。見つめる目にグッと力を入れる。そして念じる。
「むむむ!」
 彼の言っていた三つの作用。催眠、催淫、記憶操作。やり方は上記の通り何故か理解している。
「うむ」
 一通り試して見たが使えそうだった。俺の頭がおかしくなっていない限り。
 となると次は臨床試験なのだが。
「何やってるの? プラモなんか見つめて」
 さっきから妹が俺のベッドに寝転がって漫画を読んでいるのである。都合のいい事に。
 心底情けなさそうな顔でこちらを見ているコイツに、取り敢えず当たり障りのない事から始めてみよう。
「あのさ」
「うん? なにさ」
 妹の目をじっと見つめ、おもむろに魔眼発動。
「ちょっと自己紹介してくれないか?」

 普通ならここで「はぁ? 何言ってるの」と返すはずだ。が、そうはならない。幾らか呆とした顔で妹は口を開いた。
「福沢幸香。14歳。私立清祥大学付属慶光学園中等部の2年A組です。ええっと出席番号14番。水泳部に入ってます。趣味は漫画を読むこと。好きな食べ物はハンバーグ。ええっと、それから……」
「うん。もういいや。ありがと」
「はい――」

 よし。催眠作用はばっちりだ。続いて催淫作用といきたい所だが、その前に記憶操作を試みよう。これが上手くいかないと困る。
 グッと目に力を入れて「今、自己紹介したことを忘れろ」と念じる。妹は相変わらず呆としたままだが、出来たという感触はある。ふっと力を抜く感じで、彼女を魔眼から解放した。
「――で、兄。何?」
「はあ?」
「今、あのさって言ったでしょ?」

 確かに言った。魔眼を使う前に。俺は「あのさ」と言った。
 完璧だ。妹は自分が唐突に自己紹介をさせられた事を完全に忘れている。
「ちょっと自己紹介してくれないか?」
「はぁ? 何言ってるの」


 その後、夕食の時間まで俺は妹を相手に魔眼の力を使う練習をした。主に肝となる記憶操作関連を中心に。何しろこれがちゃんとできないと気軽にHな事が楽しめない。逆にこれが出来れば、誰に何をしようとお構いなしだ。
 で、結果は上々であった。完全に忘れさせる事、別の記憶を植えつける事、一時的に忘れさせてから条件付けで思い出させる事、など等。思いつく事を一通り試して見たが、全て上手くいった。且、被験者の精神にも全く悪影響が出ていない。辻褄が合わないような事も、どういう原理かさっぱりだが上手いこと誤魔化されてくれるようだ。
 実に素晴らしい。

 そして夕食後。両親を早めに「眠らせて」から、実験第二部の開始である。
 被験者は引き続き福沢幸香さん14歳にお願いする。一方的に。
 実の妹を実験台にするという事に引け目を感じるが、決して酷い事はしないので堪えて欲しい、と頭の中で謝罪する。勿論嘘だ。ぶっちゃけた話、最近じつにいい感じに女の子っぽくなってきた妹を好き放題したくて堪らんのである。
 自分に嘘はつけない。こんな俺だからこそあのおっさんも魔眼の力をくれたのだろう、と強引に納得する事にする。

「というわけで」
「へ? 何?」
 自分の部屋でアイスを齧りつつ漫画を読んでいた幸香の正面に立ち、その瞳を見つめて魔眼に力を込める。
 驚き顔が力をなくし、例によって呆とする妹。改めて見るその顔は、身内の贔屓目をのぞいてもやはり可愛い。Tシャツから覗く二の腕は水泳部であるにも関わらず綺麗な白を保っているのは全て室内プールのお陰だろう。金のある学校万歳。
「俺にも読ませてくれ。というか一緒に読もう」
「あ、うん」
 妹の手から漫画を取り上げ、ベッドの側にどっかりと腰を下ろす。普段ならぎゃーぎゃーと喚いて追い出されるような所業だが、そこはそれ、何せ魅了の魔眼である。これが働いている間、相手は決して俺に逆らったりしないのだ。
「ホラ、ここ座れよ」
 ベッドを背もたれに、床に胡坐をかいた俺は、自分の太ももをペシペシと叩いた。コクリと頷いた幸香は何の抵抗もなく、俺の膝の上に座った。
「ページ捲るの任せるぞ。お前のペースでいいからな」
「うん。分かったよ」
 どうだろうこの素直さは。思春期まっさかりの兄妹にしては割と仲が良い方の俺達だが、流石にこれほどピタリと体をくっつける事はない。スパッツ越しに感じる小さな尻の感触は、欲情だけでなく、何処かしら懐かしい安心感があった。

「ん――んっ。っと、読むの早くない?」
「ああ。そんなもんで丁度いいぞ」
 家族愛的なほのぼの感にひたりつつも、手は幸香の太ももをさわさわと撫でているのだから、いや何とも若さは即ち正直さである。
 実の所、太ももだけでなく、腹、腕、頬、そして胸と、さっきから触り放題なのだ。漫画などどうでもよろしい。それよりTシャツの隙間からチラチラ覗くピンク色の小さな乳首が気になってしょうがないのである。他にも、後頭部に顔をうずめて、シャンプーしたての髪の香りを楽しんだり、細いうなじを舌で味わったり、耳を唇で甘噛みしたり。
 全く逆らわない妹を好き放題に可愛がるのは、これほど楽しいものか! 俺は改めて、振って沸いた幸運に感謝した。

「なあ、さち。Tシャツ脱いで」
「……あ、うん。分かった」
 魔眼の力は実に都合よくアバウトである。対象は俺に魅了されているので、基本的に何でも言う事を聞くが、感情がない訳ではない。普通に優しくすれば普通に喜ぶし、恥ずかしい事を要求すればちゃんと恥ずかしがるのである。思考を完全に支配するような強制力はないので、例えば衆人環視の中で全裸になれと言われれば、蹲って泣き出してしまうだろう。恥ずかしくて出来ないという感情。俺に逆らって嫌われたくないという感情。その2つに板ばさみになって。
 強く念じて命令すれば脱ぐだろうが、それでも俺に対して敵意を持ったりする事は決してないだろう。
 ――というのが、現在の推測だ。実際の所、何がどれだけ出来るかは、これから調べていくことにしよう。

 で、今重要なのは俺の膝の上で上半身裸になった妹の幸香なのだが。
 膝の上に乗せて体中を触りまくっても、上記の通り無抵抗。Tシャツを脱がせた現在は、顔を赤らめて落ち着かなげにしている。一応、漫画は手に持っているが、ページは全く進んでおらず、読んでない事は明白だ。
「どうした? さち。ページ捲ってくれよ」
「うん――」
 魅了されているという点を差っ引いても、触られる事に抵抗感がなく、だが脱がすと恥ずかしがるというのはどういう事か。
「あのさ」
「えっと、何?」
「さちは俺の事どう思ってる?」
「ん――。好き」これは魅了されているので当然。
「もうちっと詳しく言ってくれ」
「一緒にいると安心する」家族愛的な物を感じているようだ。
「触ったりするのはどうだ?」
「くっついてるともっと安心する」スキンシップを割と好むらしい。だがこれも家族愛の範囲。
「胸とかも触ってるけど?」
「別に、兄なら」顔が赤い。魅了されている事で、じゃれあいの範囲内だったが、改めて口にすると恥ずかしいようだ。
「服、脱ぐのはどうだ?」
「裸は、ちょっと恥ずかしいけど……」俺に男の目を感じているのか、家族とは言え裸は恥ずかしいのか。微妙な違いだが、判断が難しい。

 結構面白くなってきたし、他ならぬ妹の内心を探るチャンスだ。
 ちょっとアプローチを変えて、もう少し突っ込んでみよう。

「さち。今、好きな人とかいるか? 兄以外で」
「うーん。……特に」
「気になる男子とかは?」
「――特に、いないけど」
「クラスの男子とか、部活の先輩とかで気になる人とかいるか?」
「ううん。いない」
「じゃあ、それ以外でも格好良いと思うヤツっている?」
「んー、涼一さん」
「何処の誰だソイツ?」
「『ロンドンロンド』の」

 具体的な人名が挙がったところで思わずビクッとする自分が可愛いと思う。それが漫画のキャラクターである事にホッとしている自分も。
 しかしながら真っ当な中学2年生として、漫画のキャラ以外に気になる男がいないというのも、正直どうなのかと思う。
 もしやと思うが男慣れしているわけではあるまいが……。

「さち。誰かとHな事ってした事あるか?」
「え!? な、ないよーッ!!」

 正直、物凄くホッとしている。思わずぎゅうと抱きしめてしまう程に。
 そこまでで限界だった。可愛い上に無垢で血の繋がった実の妹。それが今、上半身を晒して大人しく膝に座っている。これはもう止めようがない。おまけに止める気も更々なかった。

「さちーッ! 可愛いぞこんちくしょう!」
「きゃうっ」

 体を捻らせて正面を向かせ、初っ端から唇にキスをする。そのまま妹の顔中をチュッチュとむさぼる。手はなるべく優しく、まだ膨らんだばかりの薄い胸を揉む。平均よりも小柄で細身ではあるが、ちゃんと女の子の体つきになっている。手触りは滑らか。吸い付くような感触は何度触っても飽きが来ない。
 幸香の方はというと、豹変した俺に戸惑ってはいるものの、当然ながら嫌がってはいない。どうすれば良いか分からないといった顔だ。
「さち、さち。可愛いな」
「あっ……」
 だが両手で軽く頭を抱いて口を寄せると、幸香も何をすれば俺が喜ぶのか分かったようで。おずおずと自分の唇を突き出してきた。
「んっ――」
 数秒間、唇を合わせる。そしてどちらともなく顔を離すと、妹はパァッと花が咲くように微笑んだ。

 さて。ここからが本番である。
 俺もTシャツを脱いで上半身裸になり、妹を抱きかかえ、ベッドの前に立たせる。
「さち。これも脱がすぞ」
「えっ、そ、その……」
 待ってとは言わせず、俺は幸香の腰に手をかけ、ゆっくりとスパッツを下ろす。「あうあう」と言葉にならない声が上から聞こえるが無視だ。
 そして半分まで下ろして気付いた。コイツ、パンティー穿いてない。スパッツだけだ。良くこの格好で俺の部屋に入り込んで漫画読んだりゲームをしたりしているが、兄妹とはいえ油断しすぎじゃないかと思う。こんな事している俺が言うのも何だが。
「あ、あのッ! 兄っ、もう……」
 幸香の顔は真っ赤だ。よほど恥ずかしいのだろう。当たり前ではあるが。
「嫌か? さち」
「い、嫌じゃないけど――」
 上ずった声を上げ、両手で股間を隠す幸香。俺はにやりと笑うと妹の両手を取って、俺の側頭部を掴ませた。
「嫌じゃないなら続けるぞ。ホラ、手は俺の頭から離すなよ」
「あう、うん」
 引き続き、ゆっくりとスパッツを下ろす。恥毛は薄い。というか、漸く生えてきた程度だ。ちょっと離れると産毛と区別がつかないかもしれない。
 更に下げる。ピタリと合わさった秘裂が見えてきた。自分で開いた事もあるかないか、そんな無垢具合。
 青い果実にしても青すぎではあるのだが、それはそれで。

 スパッツを下げ切り、足を上げさせて抜き取る。これで完全に裸だ。幸香は恥ずかしさの余り半泣きだったが、腹に顔をうずめて「可愛い、可愛い」とあやすと、幾らか落ち着いたのか、俺の頭を抱え込むようにして少し体重を預けてくる。
 俺は俺で、両手で妹の小さな尻を揉んだり撫で回したりしつつ、そうっと彼女の割れ目を舐め上げた。

「ひゃあっ!」
 流石に舐められるとは思っていなかったのか、内股になって後ずさりしようとする。が、逃げられない。俺がしっかり捕まえているからだ。
「だだだ、ダメ! き、汚いよ」
 ペチペチと俺の頭をはたきながらの抗議を、だが華麗に無視し、俺は幸香の秘裂を文字通り味わった。
 純粋に味はどうかと聞かれたら「いや、うーん」と唸ってしまうが、何か本能的に逆らえない物がある。殊に、段々酸味が強くなってきてからは。
「はぁ、はぁ。あ、兄――。そんなに、されたら……」
 ピチャピチャという音が静かな部屋に響くようになると、妹は俺の頭を抱え込んだまま足を、というか体全体を小刻みに震わせていた。時折、何かに耐えるようにぎゅっと俺の肩を掴む。それが可愛くて、俺はどうにもこの行為を止められなかった。いっそこのままいかせてしまおう、と決心して舌先に込める力を強くする。
「あ、あ、あ……! 兄、ダメ――んッ! ぁ、ぁ」
 刺激が強くなった事を悟り、腰を引いて逃げようとする幸香。だが後ろへは進めず、その場で唸りながら足踏みをしている。と思ったら、カクッと力が抜けた。
「んっ、っと!」
「はぁッ! んぁ……ああ兄――」
 もう、立っているのも辛いらしい。盛んにひぐひぐと鼻を鳴らしている幸香を、俺は体勢はそのままにベッドに横たえた。即ち、妹の股間にぴったりと顔をくっつけたまま。
 幸香は肩で息をし、声にならない喘ぎを漏らしている。
 俺はそんな様子に気をよくし、ラストスパートとばかりに舌を尖らせ、クレヴァスに沿って何度も強く舐め上げた。
「ひぁっ! ひぁああッ!」
 首に回された妹の太ももを摩りつつ、僅かに開いた陰唇に舌先を突き入れる。
 タラタラと零れれてくる愛液を音を立てて啜る。
 下腹部といわず尻といわず、下半身を撫でまくる。
 夢中になって妹を責め立てていたのは、どれ程の時間だったのか。結構長かったようにも感じたし、あっという間だったような気もする。ただ気がついたら幸香は、その細い背中を仰け反らせて絶頂を迎えていた。

「兄、兄……ん――」
「で、幸香よ。うん、それはどうなんだ?」
 さて。俺の舌で見事絶頂までたどり着いた妹がそれからどうなったのかというと、酷く安らかな顔で眠ってしまったのである。裸のまま、足の付け根をべたべたにして。
 愛液と俺の唾液で大事な所を汚した全裸の妹という、異様に生々しいビジュアルに、俺のペニスは硬く屹立し、今か今かと出番を待っていたのだが。
「ぬうううう……どうしよう」
 くかー、と物の見事に寝息を立てる妹を前に宙ぶらりんの生殺し状態である。
 流石に挿入までは考えていなかったとはいえ、手でさせるか、或いは素股でという計画がここにきておじゃんだ。
「……」
 暫し見詰め合う俺とマイサン。
 寝ている幸香をそのまま襲ってしまおうかとも思ったが、警戒心のかけらもなく大の字で眠っている妹に、妙に家族愛的な物を感じ、結局俺はそれ以上の事が出来なかった。

「アイシャルリターン……という事で」
 その後、濡れタオルで丁寧に汚れた部分を拭ってやり、あまつさえ下着をはかせて寝巻きを着せて俺は妹の部屋を出た。
 まぁ今日の所は魔眼の試運転だ。その目的は果たしている。それで良しとしよう。
 ただ、――さちは俺のもんだ。誰にもやらんッ! とだけ心に決めた。

   /

 自室に戻って部屋の電気を消し、布団の上で座禅を組んだ俺は、これからの事に思いを馳せた。
 明日から自分の日常は劇的に変わる。
 人が聞いたら鼻で笑うようなどうしようもない白昼夢がそのまま現実になったのだ。
 この先一生、少なくとも女に困る事はない。やりようによっては金にも困らない。

 誰とやろう。誰をやろう。
 妹の友達から同級生、そして上級生のお姉さん方まで、次々に可愛い女の子の顔を頭に浮かべつつ、俺はそそり立った一物を強くしごいた。
「ぬっ! ムッ! おおう」
 人生最後のオナニーである。
 今日を最後に、俺のちんちんは乾く暇もなくなるぜ。HAHAHA!
 思わず高笑いした。その拍子に精液がほとばしってしまい、あろう事か、俺の顔にかかった。
「あがぶわーッ!」


 目を合わせるだけで何処の誰をも虜にし、好きな様にできる能力を得た日。
 俺は人生最後の自慰で自分自身に顔射をきめて、泣きながら眠った。



 ――続く。

モ ドル