憑依という現象。それが能力として習得可能な物である事を知ったのは、およそ3年前。大学で民俗学という
学問を研究している父親に無理やり連れられて、東北の某県に行った時の事だ。
当時、中学2年だった俺は、貴重な夏休みを潰される事に随分と憤慨した。だが結局の所、拉致同然に荷物持ちとして連れて行かれた。
ただ、そこで地元の老婆から実に興味深い、そして想像を絶する話を聞くことが出来た。
その老婆は、幽体となって自分の体から抜け出して、他人に取り付く事が出来ると言うのだ。俺も父も最初はあり得ない事だと思っていたが、老婆が実際に
やって見せた事で、言葉にならないほどの衝撃を受けた。
道を歩く女の子に取り付き、先ほど親父と交わした会話を一字一句間違う事無く繰り返して見せたのだ。そして「どうじゃ? 信じたかね」とニヤリと笑っ
た。女の子の体と声で、だが老婆の口調で。これは打ち合わせをしていたとしても出来る芸当ではない。
更に驚くべき事は、この能力は修練しだいで習得が可能だという事。
俺は老婆に頼み込んで修練の方法を聞き、そして家に戻ってからは勉強もそっちのけで、憑依能力の習得に打ち込んだ。
そして3年――。
未だ俺は幽体離脱の境地には至っていない。
籠に小鳥を閉じ込めて、その歌声を響かせよ う。
「はあ。何となくコツは分かるようになって来たんだけど……」
目をつぶって意識を集中させれば、ぼやっとした煙のような物が自分の体の中にあるのが分かる。それが俺の幽体だろう。だが、それを自分の本体と切り離す
事がどうしても出来ない。これは自分で自分の体を持ち上げる事が出来ないのと似ている。
老婆は「幽体が感じられるようになれば、後は体から出て行くだけ」と、さも簡単そうに言っていたが、中々どうして、俺はこの段階で行き詰っていた。
「他人のすら分かるんだけどなぁ」
5メートルくらいの範囲にいれば、他人の幽体すら見えるようになった。だが、それで出来るのは精々、健康診断くらいな物だ。弱っている人ほど濃度が薄
い。
「健二。居るー?」
「あ、姉ちゃん」
ノックもなしに扉を開けて、姉が部屋に入ってきた。俺より3つ上の大学生だ。
「これ、借りてたCD。返しに来たわよ」
そう言ってCDのケースを差し出すが早いか「次はどれを借りてくかなー」などと言って勝手に俺の部屋の棚をあさる。
これはまあ、いつもの事なので気にしない。俺は目をつぶって、元気そうな姉の幽体をぼんやりと眺めていた。
そして、不意に思う。
(他人の幽体って、取り出せるのかな?)
そしてイメージ。姉の幽体を、グッとこちらに引き寄せる。
ドサッ、という音がして目を開けてみれば、姉の体が力を失ってぐったりと倒れていた。
「え? えええ? 何? アタシ!? って、何よこの声?」
俺の口が勝手に開き、手が勝手に動き、足が勝手に動く。
動かしているのは、俺の中に入った姉――!
(成功だ!)
目論見は見後に当たった。俺は他人の幽体を引きずり出して、自分の体に憑依させるという能力を身に着けた。本来の目的とはまるで逆だが、まあいい。これ
はこれで面白そうだ。
(では続いて連動試験に移りまーす)
体の中に姉の幽体が入ったまま、俺は俺で自分の体に力を込める。
手、そして足。
「やだ? 何? 勝手に動く!? 何なの? んぐっ――んっ、んー!」
そして口。
「あ、あーあー、ただいまマイクのテスト中ー。うん、よし」
姉の幽体は依然として俺の中に入ったまま、俺は自分の体の行動権を握った。
姉は俺の中でパニックになっている。そりゃそうだ。突然、自分の意識が他人の体に入り込んでしまったのだから。そして俺が行動権を握れば、自分では動く
事すら出来ない。
本来は気の弱い姉だ。何が起こっているか分からずに、俺の中で泣き出してしまった。
(しょがない。試験はここまでにしよう)
俺は再び目をつぶり、意識を集中させると、俺の中にいる姉の幽体を押し出す事をイメージする。途端、姉の幽体はするりと抜け出て、元の自分の体に入っ
た。
「えっぐ、えっぐ、――ひんっ」
元に戻った事も分からず、姉は倒れたまま泣いている。
俺はしらばっくれて近づき、ポンと肩を叩いた。
「何やってるのさ、姉ちゃん。突然倒れたと思ったら、今度は泣き出したりして?」
「えっぐ、えぅ……。えっ? け、健二?」
「俺だけど? どうしたのさ? 具合でも悪いのか?」
姉は、俺の腕をがしと掴むと、取り乱した様子で言う。
「い、今っ! アタシが倒れてて、でもアタシはそれを見ててっ! 体が動かなくなって、そしてら勝手に動いてっ! アンタの声でマイクのテストがどうこ
うって!」
必死に今起こった事を伝えようとするが、肝心の俺はしらばっくれたままだ。
「……はあ?」
「だからっ! アタシが倒れて、でもそれを見ててっ、勝手に動いてっ、アンタの声でアタシがマイクのテストって言ってて……」
「……」
「……」
「……あの、姉ちゃん?」
「ゴメン。アタシ何か、変な夢でも見てたみたい」
結局、今の出来事が理解できなかったのか、姉は夢だった事にして自分を納得させるつもりのようだ。
頭を捻りながら肩を落として俺の部屋から出て行った。
(くっくっく。面白い。これは面白いぞ! この能力があれば――)
俺の頭に浮かぶのは、一人の女の姿だった。同じ学校、同じ学年、隣のクラスの女生徒。
田川麻紀。
気の強い女で、俺は奴にひどい大恥をかかされた事がある。
忘れもしない今年の4月。学年が変わった事で教室も変わるのだが、俺はうっかり去年までのクラスの教室へ向かってしまった。単に寝不足で、それまでの癖
が出てしまっただけだが、それを田川が見ていた。そして散々囃し立て、学年中の笑い物にしてくれたのだ。
癪な事だが田川麻紀は人気がある。明るい性格と口に衣着せぬ物言いで、いつも人の輪の中心にいる。俺に言わせれば、口が悪く調子に乗りやすいだけだが。
だが美人である事は確かだ。今時の女子高生のように肌を焼いたりはせず、長く伸ばした髪も染めていない。背は高からず低からず、出る所は出ていて引っ込
む所は引っ込んでいるモデルのような体型。
もし憑依能力を手に入れられれば、真っ先に乗り移ろうと思っていた標的だ。
奴に復讐しよう。怖い目にあわせて、屈辱を与えてやろう。
いつしか、俺の頭の中に黒い、とても黒い感情が湧いていた。
その感情に身を任せるのは、随分と気分の良いものだった。
/
次の日から、俺はずっとチャンスを伺っていた。
田川麻紀の幽体を俺の中に閉じ込め、いつぞやの復讐を果たす、そのチャンスを。
人に見られてはいけない。彼女が1人きりになる時を待たなくては。
そして、その機会は割と簡単に訪れた。
ある日の放課後、帰宅部の筈の田川が珍しく夕方まで学校に残っていた。何の事はない。図書室で昼寝をしていたら、そのまま寝入ってしまっただけらしい。
午後4時40分、図書室が閉じる少し前の時間。司書を兼ねる女性教諭が彼女を揺すって起こす。普段なら5時になると、その教諭が図書室にいた生徒を追い
出して鍵を掛けて出て行くのだが、今日は急な仕事で教頭に呼ばれたらしく、一人残っていた田川に鍵を預けて足早に出て行ってしまった。
田川は目を擦って辺りを見回した後、誰もいない事を確認して、また腕を枕に頭を伏せた。後20分寝るつもりなのだろう。
棚の影に俺が隠れている事も知らず――。
背後から足音を立てないように、そっと近づく。
彼女の白いうなじがはっきり分かる距離まで来た。約3メートル。十分だ。
俺は気付かれないように呼吸を整え、静かに目をつぶる。
意識を集中させると、先ず自分の幽体が感じられ、次いで眠っている田川麻紀の幽体が"視"えた。
そしてイメージする。彼女の幽体を一気に引っ張り、手繰り寄せるのだ!
「きゃっ。え? やだ……私寝てたのに。うんっ? ええ? 私が、寝てる??」
頭を伏せて寝てたと思ったら、急に立っていて自分を見下ろしている。あまりに特異な事態に、彼女はとても混乱している。だが俺の姉よりも幾らか冷静さを
保っているようで、懸命に何が起こったかを判断しようとしていた。
椅子に座り、長机に突っ伏して寝ている自分の体を恐る恐る触る。そこで一つ気付いたようだ。
「えっ!? 何これ、男子の制服? 手も変、男の手だ。こ、声もっ!」
バタバタと現在の自分の体を触る。無論それは俺の体だ。
中肉中背、さして特徴のない俺。普段親しくなどしていないので、体を見ても声を聞いても、それが誰であるか特定は出来まい。
その時、股間に妙な感覚が走った。彼女が自分が男になっている事を確かめるために、そこに手を触れたのだ。
「や、やだっ! 変なのが、つ、ついてるっ!」
変なのとは失礼な。俺は苦笑した。彼女はパッと手を離し、だがその部分を凝視している。異性の体を操っているのだ。やはり興味があるのだろう。
ゴクリと唾を飲んで、ゆっくりと手を伸ばし、ズボンの上から軽くさする。
「あっ……」
ぞくっと体が震えた。彼女にとっては初めての感覚。俺は俺で、麻紀が操って自分の物をさすっているという未知の体験。
だが、怖くなったのか、彼女はそれ以上は触らなかった。再び自分の元の体を見つめて呆然としている。
「どうして? 私、男の子になってる……」
どうしてもこうしてもない。俺は心の中の笑いを抑えつつ、自分の体に力を込める。
中心から末端へ、俺の意識が浸透していく。元より自分の体だ。姉で試したときよりもスムーズに行動権を得る事が出来た。
ただ、口と声帯だけは麻紀の好きにさせてある。
「な、何よ? 何で勝手に動いてるの? なんでっ?」
彼女の戸惑いをよそに、立ち上がってドアの方へ歩く。そして廊下に誰もいないのを確認して"開室中"になっていた札を反転させて"閉室中"にする。
「ちょっと、誰かっ――。んぐっ」
図書室の周りには使われていない空き教室があるだけだ。だが大声を出されては流石に困る。口を俺の意識下に置き、声を出させないようにした。
哀れな麻紀は、俺の中に完全に閉じ込められ、必死に「助けて」と叫んでいる。
無論知った事ではない。俺は内側から鍵を掛けると、室内に取って返して窓の側に寄る。ここは4階なので外から俺の姿が見られる心配はまずないが、それで
も見られないように身を隠しつつ、慎重に厚いカーテンを引いた。ガラスに映る姿を彼女に見られないように、薄目で、だ。
これで準備は整った。
5時になり、図書室のドアには"閉室中"のプレート。ドアには鍵が掛かっているので誰も入ってくる心配はない。室内には、厚いカーテンを通して西日が薄
く差すだけ。
後は、俺とその中にいる麻紀。そして物言わぬ本と、無防備に寝ている麻紀の体だけ。
さあ、どうしてやろう――。
俺は興奮を抑えられない。あの田川麻紀の体を好き放題いたぶれるのだ。しかも本人の意識は俺の中でその様を眺めている。
(くっくっく)
自然、笑いがこみ上げてきた。麻紀はわけも分からず、俺の中で必死に喚いているだけ。同じ体の中に俺が居る事には気付いていない。それもそうだろう。俺
は3年間必死に修練を積んで、やっと幽体を感じ取る事が出来るようになったのだ。つい今しがた、しかも一方的に幽体だけを引き摺り出された彼女に、これが
理解できてしまっては困る。
俺は寝ている麻紀に近づき、その上体を起こす。目をつぶっていて、ピクリとも動かず、まるで人形のようだ。だが呼吸もあるし脈拍もある。文字通り、"意
識を無くして"眠っているだけ。
その顔をまじまじと眺めて見れば、なるほど美人だ。
白い肌、長い睫、リップを塗って薄く湿った唇、肩より長いストレートの黒髪。
(これで、性格が良ければ言う事無いんだがなぁ)
「なっ! 何これ? 人形!? 私は私で、でもこっちで寝てるのも私で、何これ? 何が起こってるのよ!?」
折角なので俺は、口と声帯の行動権を彼女に譲ってみた。しかし言うに事欠いて「人形」とは笑わせてくれる。
(はっはっは! 違うって。お前が俺の中に居るんだ。お前の体はこっちだろ?)
「え? あっ、ちょっ、どうして勝手に動くのよ!」
黙らせるのはいつでも出来る。だが、それよりは戸惑っている彼女の感想を楽しむ事にした。もっとも喋っているのは俺の体なので、傍から見れば俺がちぐは
ぐな1人芝居をしているようだろうが。
(へえ、スベスベだな)
「や、やだ。触らないでよ!」
俺は彼女の頬に指を滑らせた。がさつな男の肌とは違う、きめの細かい感触が心地いい。
髪もサラサラだ。よほど入念に手入れをしているのだろう。
(こっちはどうかな? うあ、柔らけえ)
おもむろに手を伸ばし、彼女の胸を触る。
「いやっ! ねえ、お願いだからもう止まってよ!」
(何でさ? お前の胸、柔らかくて気持ちいいぜ)
別に会話をしているわけじゃない。麻紀の言葉に俺が一方的に返事をしているだけだ。
服の上からでも十分に柔らかい質感のある胸を、後ろから押しつぶすように触る。初めて触れたが、女の胸とはこれほど気持ちのいいものだとは。
俺は感動し、暫く掴んだり押したりを繰り返していたが、やがてそれだけでは飽き足りなくなり、彼女のブレザーのボタンを一つ一つ外した。
「やあっ! 何するのよっ!」
(何って。なあ? 見ての通り制服脱がしてるんだけど)
ブレザーを脱がして隣の椅子に置いた。続いてリボンタイも外し、ブラウスのボタンに手をかける。
「ねえっ! 止まって、お願いだからっ! ね?」
哀願するように俺の声で麻紀が言うが、口調は彼女でも声は俺なので、はっきり言って失笑ものだった。
「やだっ、やだっ、どうしてこんな事? お願いだからもう脱がさないでっ!」
ボタンを外すたびに俺の声で止めろと言うが、俺は徐々に現れる彼女の素肌に釘付けで、まったくもって馬耳東風。
やがて全てのボタンが外れて、前を開ける。彼女が身に着けていたのは、意外にも清楚な感じの白いブラだった。飾り気のない、無地のブラ。その上からそっ
と手を触れる。
「やだあっ、どうして体が勝手に動くのよう……」
相変わらず俺に動かされている事は分かっていない。まあ、俺の体なので俺が動かすのは当然だが、"俺の体に入っている"という事が理解できていない彼女
にとっては、"自分の体が勝手に動いている"という認識になっているのだろう。
それにしても彼女の胸は気持ちがいい。俺は居ても立ってもいられず、ホックを外してブラジャーをむしり取った。
プルンと大きく揺れて乳房が溢れる。脳裏に焼きつきそうな映像だ。ビデオカメラを用意しなかった事が悔やまれる。だがいい、それは今後の課題にしよう。
俺は後ろから彼女の胸を揉みしだいた。
(これは、……うああ)
手に吸い付くような肌触り。よくマシュマロのようだと聞くが、この感触はそんな砂糖菓子の物ではない。柔らかく、それでいて弾力があり、そして温かい。
掌全体で鷲掴んでなお余る、その乳房。揉めばその通りに形を変えて、下から掬い上げれば大きく揺れる。
「やだああっ! 私が、私の胸を掴んでるっ! なんで? どうしてえ!」
彼女が上げる俺の声を一斉無視し、暫くは夢中で揉み続けた。
やがて乳房の先端が固く充血している事に気付くと、俺はそれに顔を近づけた。
「なっ、ううぐっ―――ん」
この時ばかりは自分で口を使いたいので、彼女には黙って貰い、俺が口を使う。
乳首を口に含み、吸い上げ、下で転がす。意識のない体なので、本人の反応がないのは少し残念だが、これはこれで楽しかった。
麻紀の胸を十分に楽しんだ俺は、いよいよ彼女のスカートに手を伸ばす。
「や、なんで? どうして私はこんな事してるの? 自分の体なのに……」
彼女は依然、状況が分かってない。それどころか混乱が増しているようだ。
俺はスカートのホックを探し当て、それを外す。そして彼女の腰を持ち上げてスカートを脱がせた。下着は上と同じで、白いコットン。前に小さなリボンのつ
いた、極シンプルなショーツ。
俺はどうせなら、と彼女の体を抱き上げて、冷たい長机の上に横たわらせた。そしてショーツに手をかけ、ゆっくりと下ろす。
「いやっ、止めて、それだけは! くっ、なんで言う事聞かないのよこの体はっ!」
ほう、と心の中で溜息をついた。俺の声で麻紀が喚いているが、全く気にならない。
全裸で図書室の机に横たわる彼女の体に見惚れて、それどころではなかった。
(さしずめ、眠り姫って所か――)
固い唾を飲み込む音が、薄暗い図書室に響く。
「……」
全裸にされた自分の体を見る麻紀は、既に声もないようだ。
俺は少し彼女の足を広げてみる。向こうは意識がないので楽なものだ。
(ほう……塗れてる)
彼女の秘唇には、ぬらぬらとした液体が少しだけ纏わりついていた。さっき胸をいたぶった時に体が反応したのだろう。
(にしてもこれは……凄いな)
人気者の田川麻紀が、図書館で全裸を晒し、眠りながら股を濡らしている。
ひどく扇情的な光景だ。
「んっ、痛――っ!」
そう。俺も痛い。ズボンの中でカチカチになった息子が、早く出せとさっきから喚いているのだ。
(そうだ。さっきコイツ、男の体に興味がありそうだったな)
俺はベルトを緩めてズボンのボタンを外し、ジッパーを下げると、固くなったペニスを取り出した。
そして、その凶器にも似た肉棒を掴む。
「ひんっ――。やだっ、こんなの」
(そんな事言うなよ、俺の声で)
俺は椅子に座って股を広げ、麻紀の股間を鑑賞しながらゆっくりとペニスをしごく。自分と彼女の性器を交互に見ながら。ちなみに自分のを見るのは彼女への
サービスの為だ。
「――ふっ、んっ」
最高のオカズを前にした、遅いペースでの自慰。下腹に感じる、湧き上がるような衝動に、俺の声で麻紀が喘ぐ。
「んっ、ああっ、これが男の……? んっ」
そう、それが男の感覚だよ。田川サン。
あえて焦らすようにペニスをゆっくりと、そして軽く握る。
「うっ、……もっと……早くっ」
慣れない男の快感に、彼女は切羽詰ってきている。とは言え、早く強く手を動かしたいのは俺も同じだ。だが、自分の手で出してもしょうがない。
「あっ――なんで? どこ行くのよ……って、嘘っ! 止めてよ! なにこれ? 私がやってるの!?」
ペニスから手を離す。いきたいのに止められた所為で、彼女は戸惑う。だが、俺の次の行動に驚きの声を上げる。
俺は机の反対側、つまり彼女の体の頭の方へ回ると、彼女の口を開け、その中にペニスを突っ込んだのだ。
(うわああ。俺、田川の口の中に入れてるよ)
自分でやってる事とは言え、妙に感慨深い。彼女の体は眠っているだけなので無反応だが、それでも俺の手で頭を持って動かしたり、彼女の舌に亀頭をこすり
付けるのは堪らない快感だった。
「やっやっ、――わ、私、私が、私に、……ふっー、ふっー。んん!」
麻紀自身は、初めての男の経験という事で、俺以上に感じているようだ。
「あっ、あっ、――もう、だ、ダメッ!!!」
あらかじめ自慰をしていた事もあって、俺も限界だった。ためらう事無く彼女の口の中に射精する。
「あああ、ううあああっ!」
爆発的に訪れた射精感。麻紀が俺の声で低く叫んだ。大量の精液が彼女本体の口の中に流れ込む。
(――っはあ! 自分で抜くのとは大違いだな)
俺でさえ感じた事のない快感だ。射精初体験の麻紀には刺激が強かったようで、俺の中の彼女の幽体がふらふらしているのが分かる。
「凄い……。これが男の子の感じなんだ……」
(気に入って貰えたようで結構。だけど、まだメインディッシュが残ってるだろ?)
俺は再び元の位置に戻った。残念な事に彼女の股間が乾いている。これじゃあ入るものも入らない。そんなわけで、さっきより大きく足を開かせ、指で秘唇を
いじる。
「ちょっと、何で勝手に触ってるのよ! 私は、そんな事考えてないのにっ!」
(ははっ! お前じゃなくて、俺が考えてるんだよ)
クレヴァスを指でなぞり、歳の割りに薄い恥毛をさわさわと撫でる。こちらばかりではなんなので、左手で乳房を愛撫し、乳首をつまむ。
やがて少しすると、先程のようにトロリとした愛液が溢れ、手に絡むようになった。
「何でえ? 私が、私がやってるの? これ?」
自分の体が勝手に動いて、目の前の本来の体を弄んでいる――。信じようにも信じられない出来事。麻紀はすっかり意気消沈して、なすがままだ。
もっとも真実は別だし、抵抗する手段もないのだが。
俺はそんな彼女の反応を楽しみつつ、秘裂に顔を近づけた。
くらくらするような女の匂い。少しだけ混じるアンモニア臭。目の前10センチの距離にある田川麻紀の女性器。指で開いてみると、愛液が溢れだす。
(準備OKみたいだな)
俺は顔を離して、代わりに秘裂にペニスをあてがった。
「や、ややや、止めてっ! お願いっ、これ以上は止めて! 何でよっ! 私の思うように動いてよっ! お願い動いてっ! 動いてよっ! 動かなきゃダメな
んだからっ!」
(そうかそうか。動かなきゃダメか。じゃ動かないとな)
ただし、俺の思うとおりにだが!
ずぶりっ、と音を立てて俺のペニスが麻紀の秘裂に埋め込まれる。彼女の体には当然、力は全く入っていなかったが、それでも結構キツイ。
(――っ! あああああっ!)
初めて入る女の中、キツクて柔らかくて温かい。意識が飛びそうな程の快感だ。
そのまま遠慮なくズブズブと挿入する。経験自体少ないのか、途中で結構な抵抗感があったが、無理にでも突き入れた。
「あ、ああああんっ! ふっ、くうーーっ」
麻紀も麻紀で、男として自分の中に入るという不自然な快感に意識を震わせている。
少し腰を引くと、ヌラヌラとした愛液に別の物が混じっているのが見て取れた。
明かりがないので良く見えないが、確かに赤い。
(血? ――は、ははっ! そうか、コイツ処女だったんだ! 良かったなぁ、初めてなのに痛くなくて済んだぜ!)
俺の中の黒い衝動が、麻紀の破瓜の血を見てさらに大きくなった。
少し腰を引いて、突き入れる。また引いて、突く。最初はぎこちなかったストロークも、慣れてくるうちに滑らかになり、スピードも上がってきた。
「あ、ああ、ああああっ! わ、私が、――私が、私を犯してるっ!」
上り詰める感覚が腰に溢れる。一度出しているとは言え、そろそろ限界だ。
ラストスパートとばかりに、彼女の足を両腕で抱え込むように持ち上げ、ガンガン腰を振って叩きつけるようにペニスを出し入れする。ペチペチと、肉と肉が
ぶつかる淫らな音が広い図書室に響き渡る。
「う、うあああ、で、出るっ! だ、ダメ、外に出さなきゃダメなのにっ! う、うああああん!」
(受け取れよ! たっぷり中に出してやる!)
俺はそのまま彼女の膣の中に深くペニスを突きいれ、その中に精液を注ぎこんだ。二度三度と力を込め、尿道の中の物も残らず搾り出す。
(ふーーっ。気持ち良かったあ……)
引き抜いて、そのまま後ろにあった椅子に座り込む。射精後の気だるさが、今はとても心地いい。
「………」
試しに全身の行動権を麻紀に譲ってみたが、彼女もぐったりしたまま動こうとしなかった。まあ、彼女の場合は少し理由も違うだろうが。
(さて、目的も果たせたし――)
俺はポケットティッシュで自分のペニスを拭ってトランクスの中に仕舞い、ズボンを上げてベルトを締めた。
麻紀の体はどうしようかと思ったが、後始末を自分でやらせるのは流石に可哀想なので、せめて服を着るくらいまではやってやろうと思い立った。ここまでし
ておいて可哀想も何もないのだが。
ティッシュで股間を拭き、ショーツをはかせてやる。ブラウスを着せてボタンを嵌める。スカートを履かせて、ホックを閉じる。リボンタイを巻いてやり、ブ
レザーを着せる。口の中に出した精液は、少し頬にこぼれていたが、大方は意識も無いのに自分で飲み込んだようだ。よしよし。
等身大の着せ替え人形のようで、少し楽しい。
(って、あ! ブラジャーつけんの忘れた)
少し迷ったが、もう一度脱がせてつけてやるのは面倒だ。
(まあいいや。折角だから記念に貰っていこう)
というわけで、白いブラは頂いていく事にしてポケットに突っ込んだ。
「嘘、嘘よ。こんな事あり得ないわ……。おかしいもん。私、夢でも見てるの?」
俺が麻紀の着せ替えを楽しんでいる間、彼女は始終ぶつぶつと独り言のように「嘘だ嘘だ」と呟いていた。
(夢見てるの、か。じゃあそういう事にしておいてやろう)
俺は麻紀の体を元通りに椅子に座らせ、腕を枕に頭を伏せさせた。一見すると普通に眠っているようだ。これでよし。
声を含めた行動権を全て握り、そっと図書室を抜け出す。辺りには誰もいない。
廊下を早足で、だが音を立てずに進み、十分に図書室から離れた場所まで来た。
そこで目をつぶり意識を集中させる。そして自分の中にいる麻紀の幽体を押し出すイメージを強く持つ。
すうっと抜け出し、ふらふらと、だが一直線に彼女の幽体が図書室に向かうのが分かる。
「ごちそうさまでした」
俺はニヤリと笑うと、丁度部活が終了して帰宅する生徒に紛れた。
憑依して彼女の体を乗っ取るという、以前考えていたやり方とは違うが、復讐は果たせたし性欲も満たせた。実に満足だ。
麻紀自身には、何故かは分からないが、自分が男になり、体が勝手に動いて、目の前で倒れていた自分を犯したという、支離滅裂な記憶しか残らない。それが
夢じゃないのは、事後、自分の体を汚す精液となくなったブラジャーが物語る。
随分と怖いだろう。だが誰に言っても信じまい。
それにしても彼女の体は良かった。またチャンスがあればやらせて貰おう。
俺は晴れ晴れとした顔で、帰宅の途についた。
――了。