田舎の学校

 昭和48年、夏。
 私こと高原誠司は、親の都合で住み慣れた都会を離れ、G県山中にある過疎の村に引っ越した。
 嘆くなかれ、そして装う事なかれ。
 正直に全てを話すと、原因は両親の不仲に拠る物である。会社で手ひどい失態を演じた父は、だが解雇の憂き目を見る事無く、社の保有する保養施設の管理人という社内的には最果ての地に左遷された。一流大学を出て国内ではそれと知られた大企業に就職し、エリートコースを歩み、来年には専務にもなろうかという父がである。
 後に知った事だが、父は会社の金、しかも表沙汰には出せない裏金を横領したそうだ。だが実の所それは事実無根の冤罪であり、詰まる所、ドロドロとした派閥争いに負けて本社を追放されたというのが真実らしい。
 母の嘆きは一通りではなかった。資産家の娘として生まれ育った母は、会社の決定に従い、あまつさえ「実は以前から田舎に住みたかった」とのたまう父から逃げ、実家に引きこもった。母の実家は再就職の先を紹介してくれたらしいのだが、結局、父がそれを蹴った事が決定打となり、引越しの前日には母の署名捺印が入った離婚状が送られてきた。
 私が父について行ったのに理由は無い。そうせざるを得なかっただけだ。母本人は私を実家に連れて帰りたかったらしいのだが、母の母、つまりは祖母に苦い顔をされてしまったのである。「再婚の邪魔になる」と直接には言わなかったが、つまりはそういう態度を示された。上手くいっていた頃は優しい祖母だったが、この手の平の返しようには驚いた。ただ、申し訳なさそうな父の顔に一つ得心したのも確かである。だから再就職の斡旋を蹴ったのか、と。上流階級とはかくも厳しい世界。
 こうして私は、都内の名門私立高校の制服を入学して二ヶ月も経たない内に脱ぐ羽目になったのである。
 転入先はG県H市私立正鳴館学院。小中高一貫教育を謳う歴史のある学校らしい。田舎の割りに立派な学校なのだろうという俺の予想は、だが現実の前に覆された。
 甘かった。
 私は甘かった。
 某省庁と地方の教育委員会の仕事のヌルさを、完全に舐めていたのである。

 私立正鳴館学院。俺を含めて全校生徒12人。内、女子9人男子3人。中学生3人、小学生8人、そして高校生1人。クラス、教室、共に一つ。
 小中高一貫教育とは聞いていた。だがここまで一貫だとは。

 転校初日。歓迎と称する11人の合唱を聞かされた私は、ただ呆然と立ち尽くす以外に、何も出来なかった。


田舎の学校 /プロトタイプ


「ん……んちゅ――ん、ぁふ。ん、ん……ちゅ――」
 ミンミン蝉の鳴き声がやけくその様に響く森の中、酷く異質な甘い声が混ざる。
 一つでなく、三つ。
 俺の両脇と、正面下方。
「あ、あ、ぁ! わ、私もう……ひんッ――いきそう」
「ん、んぐ……。ん、ふッ――ぁ、あ」
 茹だるような暑さの中で、だがそれ以上に熱を持った小柄な体が俺に纏わりつく。汗と涎と、それ以外の体液に塗れ、鬱陶しい事この上ない。が、それでも離せないのは麻薬じみた快楽に全身を侵されているからである。いや、実際脳内麻薬が多量に分泌されているのだろう。直に浴びるには強すぎる陽射しから、逃げようとも思わないほどに。
「んああ! ぁ、ぁあ、あああッ! ッ誠司さん! 誠司さん」
「おう、いったか。よしよし」
 右腕にしがみ付き、俺の手で秘所を掻き回されていた子――相田香穂が、一際高く泣いたかと思うと、くたりと力を抜いた。股間から指を離し、愛液に濡れたままの手で頭を撫でる。目を細めて大人しく受け入れる様子は、歳と顔に似合わず妖艶ですらあるかもしれない。
「あ、あの……。私――もっと……」
「ああ、分かった。でも、その前にこの辺綺麗にしてくれ」
 その反対側。俺が左腕で抱きかかえているのは三園景子。哀願の目で口を突き出していた彼女は、こっくりと頷くと俺の顎と肩をチロチロと小さな舌で舐めだした。この子とは今までずっとディープキスをしていたのである。お陰で俺の体は零れた唾液でべたべただ。
「んふぅ、ちゅ――ん、ちゅ……ん」
 そしてさっきから一心不乱に俺のペニスを咥えているのが伊崎早苗。ゆったりしたペースで、柔らかい舌を懸命に動かしている。俺の教えたとおり、強くは吸わず、丹念にペニス全体を舐め続けている。上手くなった物だ、と感心。

 さて。
 どうしてこんな事になっているのかというと、言うまでもなく俺が仕込んだのである。
 とても高校とは言えない環境で学ぶ事一月。当初は、俺の戸惑いもあってクラスの子達とは馴染めないでいた。が、こうなってしまった物は仕方が無い。ただ1人の平教師を手伝って子供達の勉強を見て回る側に立つと、徐々に彼等とも打ち解けた。日曜が二階も廻ってくる頃には、すっかり俺の立場は気のいいお兄さんになっていたのである。
 とは言え、俺がある意味孤独である事に変わりは無い。俺と同じ目線で話せる同年代の男がいないのだ。校内は元より、村内全てにおいて。最も年齢が近いのが、クラスメイトの健二くん(10歳・小4)、次が陽一くん(9歳・小3)で、その次になると俺の親父(43歳・某社保養所管理人)であるというから笑える。いや笑えない。
 悲しいほどの田舎であるから遊び場も少ない。徒歩とバスで1時間かけて町に出ても、寂れたバッティングセンターがあるくらい。いいとこ本屋である。
 こうなるともう、俺1人で出来る遊びは釣りくらいしかない。
 それ以外には――女の子しか。

 ピコンと音を立てて、脳内電球が点ってしまった。点ってしまったのである。
 娯楽が少ないというのは青少年の健全さを奪う結果になるのである。と、後年思った。以来、青少年の遊び場を減らす政策を掲げる議員には決して投票しない事を決心するのだが、今は全く関係ないので割愛する。

 さて。
 これが隣人の怖さを知る都会であれば、俺の邪悪な考えも頭の中だけで終わったのだが、困った事に、この村の子供達はドードー鳥並の警戒心しか持ち合わせていなかった。
 男性と呼べる若者が村にいない事もあって、自分達が性的欲求の対象になるなどとは考えもしないのだろう。最年長の中学生の子たちですら。
 だからして、裏山の渓流で釣糸を垂れている俺の横で川遊びなど始めてしまうのだ。
 ――全裸で。
 時の頃は7月初め。俺を探して遊びに来たという娘2人、香穂(11歳・小5)と早苗(13歳・中1)は、躊躇う事無く服を脱ぎ、川に飛び込んだ。
 ポカンと口をあけて呆気に取られる俺の前で、きゃっきゃと水を掛け合う2人だったが、暫くして香穂の方が「家の手伝いを忘れていた」と言って慌てて帰ってしまった。
 そんなわけで、図らずも全裸の少女と2人きりになった俺は、ついに暴発。早苗に手を出してしまったのである。
 残ったのがクラスでも一番良く育っている早苗でなければ、どうだっかかと後で考えもしたが、どうにも結果は変わりそうにないという辺り、困った物だと思う。
 いやはや。

「誠司さん、誠司さん」
 釣れてる? と俺の魚篭を覗き込む早苗。焼けない体質なのか白い肌が眩しい。隠すべき所を待ったく隠そうとしないのは、ある意味で残念だったかもしれないが、勿論「隠せ」などとは言わない自分が結構好きだ。
「暇そうだな、早苗」
「暇だよー」
 遊ぼう遊ぼう、と俺のTシャツを引っ張る早苗の口に、俺は持っていた飴玉を放り込んだ。ニコニコ笑って腰を下ろす彼女を横に、暫し考える。
 このまま押さえつけて無理矢理というのは論外だ。おれもここの住人である。これからも気分良く暮らして生きたいが故に。じゃあ、口説くか、といっても相手は俺の前で躊躇う事無く全裸になってしまう困ったちゃんである。
 子犬のようにじゃれ付く早苗を可愛がるにはどうするか?
 うむ。子犬のように可愛がればよかろうよ。
 俺は勤めて優しいお兄さんの顔で、早苗の頭をぐりぐりと撫でる。
「よしよし。早苗はいい子だな。可愛い可愛い」
「んふー」
 飴玉を口の中で転がしたまま、早苗は嬉しそうに目を細め、ピタッとくっ付いてきた。
 よし、成功。
 可愛い可愛いと連呼しながら、徐々に撫でる範囲を広げる。頭から肩、そこから背中へ。ポムポムという子供を撫でる手つきは、それに伴って素肌を優しく刺激する愛撫へ。
 抵抗はまるで無く、それどころかうっとりとした顔で俺に身を任せる早苗の呼吸は、次第に荒く、そして甘くなる。
 一呼吸置いて再び頭を撫でた俺は、そっと彼女を抱きしめた。そしてそのまま抱き上げて膝の上に座らせる。
「ん、あ。誠司さん……」
 早苗は状況と自分の体の変化に流石に戸惑っているが、こちらはここで止めるわけにもいかない。怖がらせないよう、ひたすら笑顔で「大丈夫」を連発しつつ優しく撫でる。
「ぁ、あ、んっ! あ、あの……ひゃ――。あ……んッ」
 膝に乗せた早苗を横抱きにし、そのまま愛撫を続けると、彼女の方も本格的に感じてきたのか、切なげな顔で甘い悲鳴を上げた。
「ん、気持ち良いか? 早苗」
「あッ、あ、ぁん。……よく、分かんな――んッ……ぃ」
 中学一年生でありながら、手の平に収まるほどに程よく成長した早苗の胸を揉む。力をいれず、触れて擦るように。柔らかく、ちゃんと女性の乳房だと言えるそれを乱暴に弄びたい衝動に駆られるが、ここが我慢のしどころである。
「んッ、んぁ……何か、変――あ、ぁ……私、おかしく――んあぁッ!」
「大丈夫。その感じが、気持ち良いって事なんだ。嫌じゃないだろ?」
 早苗はコクコクと首を縦に振って俺の首筋にすがり付く。気を良くした俺は、彼女に対する愛撫を一段階上にあげた。
 胸を包んだ手の、その指の間にある突起を優しく挟み、軽く擦る。額から頬、鼻先に口づけをする。下半身方面にも手を伸ばし、細い足を撫で、小さな尻を擦る。
「あ、あぁッ! あぁ……ん。気持ち、いい。ぁ……ああ」
 早苗の高まり具合に、頃合やよしと判断し、俺はついに彼女の秘所に指を伸ばした。
「ひぅ――ッ! あ、ああ、誠司さん……ん、はぁ、そこ――は」
 指先で僅かに突付く所から始め、徐々に動きを変えていく。割れ目に沿って、指を上下させる。優しく、時に指が埋まるほどに。その間も、キスと上半身の愛撫を忘れずに。
 早苗の体はやがて細かく震えるようになった。甘いだけだった声も、悲鳴のような喘ぎ声に変わってきている。何より、閉じ合わされた割れ目からはトロトロとした愛液が零れている。
「早苗、可愛いなお前。本当に可愛い」
「あ、あぁッ! んあッ ふああっ……ッ!」
 既に焦点のあっていない瞳は虚ろで、何処を見ているのかも分からない。だからこそ、この瞬間こそが重要なのである。俺は、自分自身の高まった性欲を押さえ込み、早苗によりいっそうの愛撫を重ねた。丹念に、慎重に、じっくりと。
 そう。言葉ではなく、体に直接教え込むのだ。気持ち良いという事を。

「あふ……ぁ、ああ、んぁ――」
 そうしている内に、早苗はガクガクと大きく震えだした。目に涙を浮かべているのは、達してしまうことへの恐れだろう。俺は股間への愛撫は続けたまま、だが片手で早苗を抱きしめて、お互いの頬をピタリと合わせた。
「うん、大丈夫だ。早苗。そのまま、その感じを全部受け入れていい」
 耳元で「大丈夫、怖くない」と囁き続ける。それで彼女も安心したのか、全身の力が僅かに抜ける。途端、早苗は大きく痙攣すると、ついに堪えきれなくなったのか、一際大きく声を上げて、仰け反った。
「ぁ、あ、あああああ――ッ!」

 絶頂に達し、ガクッと力が抜けた早苗の体を包み込むように抱きしめる。いくところまでいったわけだが、ここもまた大事な所である。未だ大きな快感の余韻で虚ろなままの早苗に、これ以上の刺激は必要ない。今は優しく抱き続けることで、彼女に安心感を与えるのだ。
「んふう……誠司さぁん――」
 うっとりと俺を見上げる早苗。
「うんうん。気持ち良かったか? 早苗」
 彼女は火が付いたように一瞬で顔を赤く染めると、無言のまま、俺の胸板にスリスリと鼻先を擦りつけてきた。

 良し、――刷り込み成功。

 いきり立った俺の物は、後ほど自分で慰める事にしよう。時間は幾らでもあるのだ。男の生理を教え込むのはまだでいい。暫くの間はひたすら可愛がって、骨の髄まで「気持ち良いという事」を染み込ませるのだ。
 勿論、早苗だけである必要はない。
 俺を除けば最年長である中二の景子、今日は帰ってしまった香穂、それに景子の妹で小6の則子あたりも捨てがたい。
 いやいやいや。どうしようもない田舎だと思っていたが、こうしてみると良い所じゃないか。
 俺の思惑をよそに、相変わらず裸のまま、しっかりと抱きついて離れようとしない早苗の頭にポムと手を載せる。
「これからもよろしくな」
「はいっ!」
 うん、実にパラダイス。

   /

 と、まあ。
 こんな具合で、灰色を通り越して灰その物になったかと思われた俺の高校生活は、実に有意義な物なった。
 だいたい同じようなパターンで下級生達を手懐け、可愛がり、教え込んだ。時に一対一でじっくりと、或いは何人か纏めてたっぷりと。遠慮も容赦も無く、前も後ろも中に外に。学校で着たまま、外で脱がせて。

 で。
 後に知ったことだが、やりたい放題やっていた俺の所業が、村の大人達にバレていなかったかというと、勿論バレていた。であるにも関わらず、俺が何のお咎めも無くやりたい放題を心ゆくまで続けられたかと言うと、そこには村長の恐るべき陰謀が隠されていたのである。
 未婚でありながら子沢山になってしまった俺を眺め、村長は嬉しそうに笑った。
「いやあ、お陰で村が若返ったわい」
「ぎゃふん」



 ――了。

モ ドル